宴会の席で
案の定その日も、Cさんは義実家に着くなり義母にエプロンを渡され、食事の支度をすることに。
「ほら、男の人にお酌して」
忙しく食事を作り、配膳を終えたCさんが席に着こうとすると、義母がそう言って瓶ビールを渡してきました。この家では年齢の若い女性から男性にお酌をして回るという暗黙のルールがあります。
すでにCさんより年下の従姉妹はビール瓶を持って立ち上がっています。
なんて古いしきたりなんだろうと思いながら、Cさんは義母に急かされて渋々席を立とうとしました。
「なんで女の人だけお酌しなきゃいけないんだよ? みんなで座ってゆっくり食べればいいじゃん」
ふいに若い男性の声が響き、その場がシーンと静まり返りました。なんとそれは、Cさんの息子でした。
「お酌は女の人がやるものなんて今の時代に合ってないよ。みんなお酒くらい自分で注げるのに、なんで黙ってコップ持って座ってんの? 自分のことは自分でやって、早くみんなで一緒に食べようよ」
「でもこれは昔からの決まりで……」
反論しようとした義父に、息子は首を傾げました。
「伝統が大事なのは分かるけど、今は令和だし、そういう男女差別みたいなのは良くないんじゃない?」
Cさんは心の中で息子に拍手を送り、再び席に着きました。
「息子の意見も一理あるんじゃないでしょうか。さぁ、みなさんお酒はご自分でどうぞ。そして今日は美味しい食事とお話を楽しみましょう」
そしてにっこり笑って料理を食べ始めました。
義母はかわいい孫の手前、Cさんを怒るに怒れません。他の親戚たちも自分でお酒を注ぎ、女性たちもゆっくりご飯を食べたそうです。
気の進まないお酌はしなくてもいい。今はそんな時代になりつつありますね。女性にとっては喜ばしいことです。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。