親戚の集まりで義実家に
Cさんは当時、旦那さんと高校生の息子との3人暮らし。
ある年の初めに、十数年ぶりに親戚が集まることになり、家族で義実家に行くことになりました。
義実家は車で数時間かかる古い田舎町で、実はCさんは義実家に帰省をする際、いつも気が重くなるのでした。
なぜなら義実家に帰省をするたびに近所の親戚が集まり、大人数での宴会が開かれるからです。
義両親や親戚たちは悪い人ではないのですが、義母やCさん、兄嫁や旦那さんの従姉妹など女性たちが食事の支度やお酒の準備をして忙しく動いているのに、男性たちはそれを手伝いもせず座っておしゃべりをしているのです。
しかも女性たちは忙しく働く合間に男性たちにお酌をして回らなければならず、ゆっくり食事をする暇もありません。
いかにも昔ながらのその風習に、Cさんはいつもうんざりしていました。
宴会の席で
案の定その日も、Cさんは義実家に着くなり義母にエプロンを渡され、食事の支度をすることに。
「ほら、男の人にお酌して」
忙しく食事を作り、配膳を終えたCさんが席に着こうとすると、義母がそう言って瓶ビールを渡してきました。この家では年齢の若い女性から男性にお酌をして回るという暗黙のルールがあります。
すでにCさんより年下の従姉妹はビール瓶を持って立ち上がっています。
なんて古いしきたりなんだろうと思いながら、Cさんは義母に急かされて渋々席を立とうとしました。
「なんで女の人だけお酌しなきゃいけないんだよ? みんなで座ってゆっくり食べればいいじゃん」
ふいに若い男性の声が響き、その場がシーンと静まり返りました。なんとそれは、Cさんの息子でした。
「お酌なんて今の時代に合ってないよ。みんなお酒くらい自分で注げるのに、なんで黙ってコップ持って座ってんの? 自分のことは自分でやって、みんなで一緒に食べようよ」
「でもこれは昔からの決まりで……」
反論しようとした義父に、息子は首を傾げました。
「今は令和だし、そういう男女差別みたいなのは良くないんじゃない?」
Cさんは心の中で息子に拍手を送り、再び席に着きました。
「確かにそうよね、みなさんお酒はご自分でどうぞ」
そしてにっこり笑って料理を食べ始めました。
義母はかわいい孫の手前、Cさんを怒るに怒れません。他の親戚たちも自分でお酒を注ぎ、女性たちもゆっくりご飯を食べたそうです。
気の進まないお酌はしなくてもいい。今はそんな時代になりつつありますね。女性にとっては喜ばしいことです。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。