新入社員時代、毎日のようにきつく叱られ、心が折れそうだったD子。しかし数年越しに、上司の胸の内を聞かされて――!? 厳しさの裏に隠されていた信頼と期待。当時を振り返りながら、D子が話してくれました。

厳しい上司に、憂鬱

入社したばかりの頃、私は毎日が憂鬱でたまりませんでした。
配属部署で、女性上司のA子さんから日々厳しい指導を受けていて、心が折れそうになっていたのです。

「なにこの資料、全然ダメじゃない!」
「何度同じミスを繰り返せば気が済むの!?」
他の人にはそうでもないのに、なぜか私にだけ、きつい言葉をかけるA子さん。

同期たちの同情的な視線を感じるたび、惨めな気持ちでいっぱいになりました。
「どうして私だけ……」

中堅社員に

そんな環境でしたが、なんとか走り続けるうち、あっという間に数年が経ちました。

最初はついていくのだけで必死だった私も、だんだんと仕事の要領をつかみ始め、中堅社員と言えるくらいには成長したと思います。

相変わらず、A子さんからはよく怒られるものの、次第に重要なプロジェクトを任されるようにもなり、少しずつではありますが、チームに貢献できるようになった気がします。

思いもよらなかった、上司の想い

さて、先日行われた飲み会でのこと。

珍しく酔っぱらったA子さんが、柔らかな表情で私に向き直りました。

「お酒の力を借りて、打ち明けるわ。実はね、あなたが入ってきたとき、あ、この子が一番できるな、ってピンと来たの。私なりに目をかけていて、妥協せずに厳しく指導したかった。伝え方が下手で、傷つけてしまったことも多かったよね、ごめん。でも、ここまで頑張ってくれて本当にありがとう」

思いもよらない言葉を聞いて、私は驚きました。
絶対に嫌われていると思っていたのに――。

「人を育てることはとても難しかった。けど、今のあなたが私を肯定してくれている気がするの」
私と同じように、A子さんも悩んでいたんですね。

厳しくも、愛のある指導

その夜を境に、私たちの関係は大きく変わりました。
今では親友のように、仕事の相談から恋愛の悩みまで、何でも打ち明けられる関係。
そんな私たちを見て、会社の人たちはとても驚いているようです。

最近では、私も後輩を指導する立場になり、当時のA子さんの苦労もわかってきた気がします。
彼らに対しては、信頼や期待は必ず言葉にして伝え、厳しくも愛のある指導を心がけていこうと思います。

【体験者:30代女性・会社員、回答時期:2024年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。