友人の親切を疑ってしまった
友人Yには、とても親切にしてくれる友人Kがいました。Kは、Yがパートを休めないときに子どもを預かってくれたり、お迎えに行ってくれたりと、Yをいつも助けてくれていたのです。最初はその親切が嬉しかったYも、次第に「なんでこんなに優しいの? 何か裏があるのでは?」と疑い始めました。
一度疑い始めると、全てが怪しく思えてしまったY。「もしかして私に何かお願いしたいことがあるのかな?」「後で何かを期待されているのかも?」と、Yの中でモヤモヤした気持ちが膨らんでいきました。Kの親切さに感謝しつつも、その本当の理由を疑わずにはいられない気持ちが続いたのです。
ある日、YはKとゆっくり話す機会がありました。Yは思い切って「あのね、こんなに親切にしてくれてすごく嬉しいんだけど……。もしかして私に何かお願いしたいことがあるの?」と尋ねてみました。するとKは少し驚いた顔をして、「え? そんなこと全然ないよ。ただYさんが大変そうだったから、少しでも手助けしたかっただけ」と、笑顔で答えたのです。
育ってきた環境の違いだった
「実はね、私の両親がそうやって育ててくれたの」と、穏やかな口調で続けるK。実は彼女、裕福な家庭で育ったいわゆる「お嬢様」でした。
Kの家では「困っている人を助けるのは当たり前」という考えがあり、いつも他人に親切にすることを教えられていたのです。Kの母親は、どんなに忙しくても近所の人を助けたり、友達のために時間を割いたりしていました。Kはそんな母親の姿を見て育ち、それが自然な行動として身についていたのです。
「Yさん、覚えてる?」とKが微笑みます。「うちの子が友達とうまく遊べないときに、一緒に遊ぼうって誘ってくれたでしょ? あのとき、本当に嬉しかったんだ。だからYさんが大変そうに見えたとき、私も何かできることをしたかっただけ。本当にそれだけで、特に何か見返りを求めているわけじゃないよ」とKは言いました。
Yはその話を聞いて、Kの優しさに胸を打たれました。それなのに、自分は彼女を疑ってしまったことが恥ずかしくて申し訳なくて……。それと同時に、Kへの感謝の気持ちが胸に溢れてきたのです。
そして「本当にありがとう! すごく助かってるよ」と涙ながらに感謝を伝えると、Kは少し照れながら「そんなの、お互いさまだよ」と微笑んでくれました。
誤解が解けて深まった友情
それからというもの、Yは相手の善意を素直に受け取ることの大切さを学び、Kも「助けが必要なとき、お願いしてもいいかな?」とYを頼ってくれるようになりました。二人の距離はグッと近づいたようで、それまで以上に深い信頼関係が生まれたのです。
あの日Kの生き方を知ったYは、自分の中でも大きな心境の変化が起きたようでした。
Kに対する感謝の気持ちが強くなっただけでなく、YもKのように、困っている人を自然に助けられる人になりたい! と思うようになったのです。
今ではYも、積極的に周囲の人に声をかけたり、感謝の気持ちを言葉や行動で表すようになりました。もちろん、KはYにとって今もずっと特別な存在です。お互いに支え合うことで、二人の友情はさらに強くなりました。周りのママたちからも「本当に素敵な関係だね」と、うらやましがられているそうです。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2024年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:N.tamayura
長年勤めたブラック企業を退職し、書くことを仕事にするためライターに転職。在職中に人間関係の脆さを感じた経験から、同世代に向けて生き方のヒントになるような情報を発信すべく、日々リサーチを続けている。