「残業」の嘘に隠された真実
ある日のこと。Mが義父と世間話をしていると、思いがけない事実を知ったのです。
それは結婚当初、夫が週末になると「今週も残業だ」と言って遅く帰宅していたけれど、本当は実家でお母さんの料理を食べていたというのです!「あいつはママの料理が大好きだからなぁ」と呑気に笑う義父。
確かに、その頃のMは新婚生活をスタートしたばかりで、料理があまり得意ではありませんでした。だけど、下手なりに毎日一生懸命に料理を作っていたのです。夫に喜んでほしくて、頑張って作った料理が食べてもらえなかったこと。しかもそれだけでなく、「残業」という嘘で隠されていたことを知り、Mはとてもショックを受けました。
たとえ5年前の出来事だったとしても、「夫は私の料理よりもお義母さんの料理が食べたかったんだ。」という、みじめな気持ちがMの心に広がりました。
怒りと失望、夫への問いかけ
その夜、Mは怒りを抑えながら、帰ってきた夫に静かに問いかけました。
「お義父さんに聞いたよ。新婚の頃、そんなにお義母さんの料理が恋しかったなら、実家に帰ればよかったじゃないの」。Mは深い悲しみと夫への失望を込めて冷たく言い放ちました。
それを聞いた夫は驚いた表情で「いや、それは……。」と言ったきり俯いて黙り込んでしまったのです。夫は耳まで真っ赤にして、恥ずかしさで何も言えないようでした。自分の行動がどれだけMを傷つけていたのか、その時に初めて理解したようです。
Mは夫に「どんなに小さな嘘でも、私をずっと騙していたことが許せない」と、本当の気持ちを打ち明けました。「確かに私は料理が下手だったよ、だけど残業だなんて嘘をついてまで」
Mは震える声を必死に抑えながら続けます。「夫婦は信頼が大事なのに、その信頼が壊れたらどうやって夫婦でいられるの?」と、涙ながらに訴える彼女を見て、夫は深く反省しました。
夫の提案、新たなスタート
その夜、夫はMの話を真剣に聞き続け、彼女の気持ちを受け止めようとしました。
彼自身、これまでの行動がどれほど無神経だったかを改めて考えさせられたようです。Mの信頼を取り戻すためにどうすればいいのかを考えたのでしょう。翌朝、夫はMにこう提案しました。
「本当にごめん。僕も料理を覚えるよ。これから土曜日のランチは僕が作るよ。」
この提案にMは驚きましたが、夫の後悔と反省の気持ちが伝わってきて、少しずつ彼を許す気持ちが芽生えるように。そして、土曜日に夫が作るランチが二人の楽しみの時間になっていったのです。
最初は不器用で微妙だった夫の料理も、少しずつ上達していきました。二人で料理を楽しむことで、徐々にわだかまりも解けていきました。
夫婦生活では、小さな嘘が大きな問題を引き起こすことがあります。M夫婦のように、お互いの気持ちに耳を傾けて変わる努力をすることが、夫婦関係を良くする秘訣なのかもしれませんね。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2024年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:N.tamayura
長年勤めたブラック企業を退職し、書くことを仕事にするためライターに転職。在職中に人間関係の脆さを感じた経験から、同世代に向けて生き方のヒントになるような情報を発信すべく、日々リサーチを続けている。