お下がりばかりの子ども時代
私には2歳上の姉がいます。幼い頃、洋服や文房具はほとんどが姉のお下がりで、新しいものを買ってもらえることは滅多にありませんでした。学校の遠足でみんなが新品のリュックを持っている中、私だけ使い古されたリュックだったことがあり、「なんで私だけいつもこれなの?」と悲しくなったことを覚えています。
母にぶつけた不満
大人になり、実家に帰省した際、ふとその頃のことを思い出し、「私、子どもの頃ずっとお下がりばっかりで、不公平だなって思ってたよ」と軽く母に伝えました。母は一瞬驚いた顔をし、少し黙った後にこう言いました。
「本当にごめんね。でもね、あの頃は家計が厳しくて、どうしても優先順位をつけざるを得なかったの。新品を買えないことが申し訳なくて……それを知られるのが怖くて、必死に笑ってごまかしてたのよ。」
母の思いを知り心が温まる
母の言葉を聞いて、私は胸がギュッと締め付けられるような思いがしました。当時は「ケチな親」と思っていたのに、裏では私たち姉妹に少しでも不自由を感じさせないよう努力してくれていたのだと気づいたのです。
「お母さん、そんなこと全然知らなかったよ。ありがとう」と素直に伝えると、母は少し照れくさそうに微笑み、「それでも、今こうして笑い話にできて良かった」と言ってくれました。
今だから思うこと
子どもの頃は気づけなかった親の苦労や思い。それを理解できるようになった今、感謝の気持ちが大きくなりました。今では自分の子どもにも「少ないものでも愛情で補える」ことを伝えていきたいと思っています。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。