パートナーのことは好きだけど、なかなか結婚に踏み切れない……。それは何も男性だけではありません。筆者の友人S子が、将来のことについて悩んでいたとき、彼との結婚を後押ししてくれた上司とのエピソードを聞かせてくれました。

結婚に踏み切れない、、、

私はとにかく慎重で、心配性な性格です。
それゆえに、恋人と付き合ってもうすぐ10年になるというのに、なかなか結婚に踏み切れません。
そんな私に対して、彼は相当な不満があるようでした。

でも、結婚することで自分のキャリアに影響するようなことがあったら……?

将来のキャリアアップのために、ずっと努力してきました。
「今」を犠牲にしてでも、老後は心配事なく、穏やかに暮らしたい。だからこそ、いい役職に就いて安心したいのです。

記念日に別れ話!

そんな中で迎えた、彼との交際10年の記念日。

この日、改めてプロポーズされる気がした私は、わざとらしく先回りして言いました。
「もう10年かぁ。今はまだ無理だけど、結婚はきちんと考えているからね。希望のポストに昇進できるまで、応援してくれる?」

いつもなら、困ったような笑みを浮かべて頷いてくれる彼。
ところが、この日は違うようでした。

「なんだよ、それ。もう10年だぞ。仕事のほうが大事ならそれでもいい、でも振ってくれよ。結局、僕のことは都合よく置いておきたいだけだろ。もうたくさんだ、別れよう」

温厚な彼がこんなにも声を荒らげたのは、初めてでした。

憧れの上司に相談

彼と連絡が取れなくなった私は、心にぽっかりと大きな穴が開いたような気分になりました。
切り替えようと思っても仕事にまったく身が入らず、ミスを連発してしまいます。

上司のAさんが食事に誘ってくれたのは、そんな私を見かねてのことでしょう。
Aさんは、まさに私のロールモデル。重要な役職についている人で、私は以前から憧れの念を抱いていました。

私はAさんに、今回のことや自分の思いについて洗いざらい打ち明け、相談することにしました。

「明日死ぬと思って、生きてみたらどう?」

「俺も、仕事ばかりの30代だったよ。たしかに、今のポジションはそれがあってこそ。でも、さあこれから人生楽しむぞ、と意気込んだところで、もう若いころのような体力も情熱もない。いい経験は、心が燃えているうちにしておくべきだった。そうすれば今の自分は、もっと豊かな人間だったかもしれない。やっぱり後悔しているんだ」

Aさんの言葉は、私にとって衝撃的でした。
彼こそ、何もかも持っている豊かな人間のはずなのに、本人がそれを否定するのですから。

「今重要視しているものは、10年後、必ず大したものに思えなくなるはず。未来ではなく、今を大切にするべきだと思う。未来は“今”の積み重ねでできているんだから。――もし明日死ぬとしたら、自分は何をするだろう? そう思って生きてみたらどうかな」

その後

私の結論は、彼と結婚することでした。
彼との結婚生活は満ち溢れていて、仕事にもより身が入り、結果的には人生がさらに豊かになったと感じています。

あのときAさんがくれた言葉がなかったら、こんな幸せは得られなかったかもしれません。
「未来のために」と思い込みすぎて、肝心の「今」を見失っていた私の視野を広げてくれたAさんに、感謝の気持ちでいっぱいです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。