誰もやらない雑務
Nさんは当時デザイン系の会社で働いていました。
ある日Nさんが顧客が来る前にコーヒーを淹れようとすると、コーヒーの粉を入れている容器がすっからかんになっているのに気づきました。
「またコーヒー切らしてる……前に淹れた人誰よ!?」
Nさんは顧客が来る前に慌てて庶務に行き、コーヒーの粉を買っておいて欲しいと連絡し、他の部署からコーヒーを分けてもらいました。
コーヒーやお茶などの常備がなくなったら、最後に使った人が庶務に連絡するのが職場のルール。しかし最近はルールを守らない人が増えており、このような事態になることがよくあります。
その他にもペンなどの備品の補充やパンパンになったシュレッダーゴミをゴミ袋に移し替える作業など、細かい雑務は「気づいた人がやる」という風調があります。
しかし最近は雑務を見て見ぬふりする人が多く、結局はよく気の付くNさんがやることになってしまうのです。
「もう我慢できない!」
Nさんは職場の上司のところに行き、備品のチェックやシュレッダーゴミの処理などの雑務は持ち回りでみんなでやることにしたいと訴えました。
上司の意外な発言に……
すごい剣幕で「雑務に手を取られて本業がおろそかになる」と訴えるNさんに、上司はきょとんとした顔。
「え、好きでやってたんじゃないの?」
Nさんは耳を疑いました。一体誰が忙しい自分の仕事をほったらかして好きで雑務をこなすのかと言い返したいところでしたが、Nさんはぐっとこらえました。
「……もう結構です」
それからNさんは他の同僚と同じように、見て見ぬふりをして放置することにしました。
すると数日で備品に不足が出て、シュレッダーはゴミでパンパンに。来客があってもお出しするコーヒーやお茶もありません。
さすがに業務に支障が出たため、上司はNさんに謝罪し、雑務は持ち回りでやることになったそうです。
「誰かがやってくれるだろう」と見て見ぬふりをしていると、結局は誰もやらないんですよね。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。