初めての場所でタクシーに乗ることに
先日、私は会社で担当することになった新規取引先への挨拶のため、生まれて初めて訪れる地方都市へ出張することになりました。
駅から目的地まで少し距離があるようだったので、駅前でタクシーを拾って乗り込むと、中年の男性運転手が愛想よく「お姉さん、観光かい?」と話しかけてきました。
私が「いえ、仕事なんです。初めての土地なので道も全然分からなくて……」と返答して目的地を告げると、運転手は「ああ、あそこね。分かってるよ」と頷き、ナビもセットせずに発進しました。
「あれ? おかしくない?」
しかし、数分走ったところで私は奇妙なことに気がつきました。窓の外を流れる景色は、私が事前に調べてイメージしていたものとは全く違っていたのです。
ビルが立ち並ぶビジネス街に向かうはずが、タクシーは住宅街を縫うように進んでいます。
思わず「あの……目的地ってこっちですか?」と聞きましたが、運転手は「そうだよ。ここらへんは観光客の人には分かりにくいから!」と答え、どんどん進んでいくのです。
疑いが確信に変わる
さらに数分が経ち、私の不安は確信へと変わりました。これは明らかに遠回りだ、意図的にやっているとしか思えない……。
私は「道が違いますよね。わざと遠回りしようとしてるならやめてください」とはっきり告げました。
しかし運転手は「いやいや、こっちの方が早いんだよ」と、しらを切るばかりです。
ついに私は持っていたスマホの画面を見せて「いくら土地勘がなくても、全く違う方向に進んでたらさすがに分かりますよ」と指摘!
知らない土地では気をつけて!
実は、タクシーに乗り込んで間もなくナビが消えていることに気づいた私は、密かにスマホの地図アプリを起動し、リアルタイムで現在地を確認していたのです。
運転手は慌てた様子で「あ、ああ……久しぶりに行くところだから勘違いしちゃったな~」と言い訳をしながらUターンし、本来のルートへと走り出しました。
余分にかかってしまった料金はちゃんと値引きしてくれたので、本社にクレームを入れたりはしませんでしたが、初めての場所では特に警戒心を持つことが大切だと痛感した出来事でした。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2024年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。