すると、母はまったく悪びれる様子もなく「え?ないわよ?」と言い出しました。
物心ついた頃からすべて預けていたお年玉がない?
私は思わず両親の顔をジッと見つめてしまいました。
理由
話を聞くと、貯めていたお年玉は、体調を崩して入退院を繰り返していた父の医療費や、生活費に消えているということでした。
確かに、その頃は父が大病を患っていて、母も看病に大変だった時期。
父の仕事も不安定だったため、生活は大変だったんだと思います。
家計が苦しかったことは理解できます。ですが、私がショックだったのはお金そのものよりも、「子供のお金を一言の相談もなく使い、それを当然のように思っている」という親の態度でした。
「せめて使わせてもらうね、って一言言ってほしかったな……」
そんな私の思いを余所に、母はどこか他人事のような様子。親への信頼が揺らいだ、悲しい瞬間でした。
自分が親になって誓ったこと
私が親になってからは、自分の経験を活かして、お年玉だけは子どもに自由に使わせることにしています。
子ども達は、年に1回だけでも自分の好きな物を買えることを楽しみにしている様子。
貯金の大切さも教えつつ「楽しい!」という体験をさせてあげたいという、夫の意向もあります。
すでにもう他界した両親ですが、当時のことを妹と話すと、今でも苦い笑いとともに複雑な思いがこみ上げます。 けれど、あの時の「寂しさ」を知っているからこそ、私は子どもたちの意思を尊重する親でありたい。消えたお年玉は戻ってきませんが、それを反面教師にすることで、今の温かな家族のルールが生まれたのだと思っています。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。