その人物は、いかにも「いまどき」な若い男性でした。
黒のストリート系ファッションに身を包み、首には大きめのヘッドホンをかけ、ロン毛を無造作に1つ結びにしている彼は、ぱっと見では、少し近寄りがたい雰囲気。
しかし、彼はそんな見た目とは裏腹に、赤ちゃんの様子に気づくとすぐ声をかけました。
「すみません。背中の赤ちゃんの足が紐に引っかかって辛そうなんですけど、よかったら荷物を持っておくので、直しますか?」
と男性は優しく声をかけたのです。
母親は驚いた様子でしたが、男性の申し出に素直に応じることに。
青年がさり気なく荷物を引き受けると、母親は、赤ちゃんを一旦おろし、慎重に足の状態を確認。
赤ちゃんの小さな足先を紐から開放し、しっかりとおんぶし直しました。
安堵した様子の母親に、男性もにっこりと微笑みました。
優しさの連鎖が生んだ小さな奇跡
幸い、赤ちゃんの足に怪我はなく、母親は安心した表情で
「ありがとうございました。助かりました」
とお礼を伝えました。
「赤ちゃんが無事でよかったです」
とにっこりと微笑み応じる男性。
その様子に、A子も周りの乗客も、彼の見た目とのギャップに少し驚きつつも温かい気持ちになりました。
「素敵な人だね」と心に刻む瞬間
その場を見守っていたA子の娘も、電車を降りてから
「さっきの人、素敵なお兄ちゃんだったね」
と呟きました。
娘の話に「人を思いやる気持ちって大事だね」と深く頷くA子。
親子で「見知らぬ人の優しさ」を目の当たりにした瞬間でした。
今回の件で、A子は親切にされる人も、それを見ている周囲の人々も、みんなが幸せな気持ちになれると改めて実感することに。
そして、人の優しさや思いやりは、外見に左右されないのだと感じた出来事でした。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。