子育てが終わってから「あの時こうすれば」と振り返ることは、親なら誰しもあることかもしれません。
よかれと思って行った教育熱心な育て方。それがその後の娘に引き起こしたこととは……。
今回は、ある後悔を胸に秘めた筆者の知り合いのマダムE美さんのエピソードをご紹介します。

「優秀な子にしたい」と教育ママに

E美さんは現在70代半ばの上品なマダム。
当時としては珍しい大卒で出版社に勤務するキャリアウーマンでしたが、結婚を機に専業主婦になりました。

産まれた一人娘を大事に育てていく中で
「頭が良くて困ることはない。優秀な子に育てよう」
と考えます。

そのため小学校低学年の頃から塾に行かせ、家庭でも娘の勉強を見守る熱心な教育ママに。

住んでいる地域が教育熱心な人が多い地域だったことも、E美さんの教育熱にさらに拍車をかけることに。

「他の子よりもいい点数を取らないとね!」叱咤激励する日々

「一番になることが大事」
「あの子よりもいい点数を取らないとね」

娘のやる気を高めようと、周りと比較して叱咤激励することが多くなりました。

実はその背景には、E美さん自身が就職して感じた「学歴の壁」の苦い経験がありました。
自分より高学歴な人が仕事でいつも優遇されていた悔しさとコンプレックスがあったのです。

「この子には私が味わったような思いはさせたくない。だから人よりも良い学歴をつけさせてあげないと!」

過去の悔しさを思い出すたび、娘への教育の熱が帯びていきました。

優秀に育った娘。しかし誤算が!?

E美さんの全身全霊の教育の結果、娘は最難関の中高、大学を経て一流会社に就職。

「自分の子育ては成功した」と安堵したE美さん。

しかし社会人になってから思いもかけないことが。
娘は周りの人とうまく関係を築けず、トラブルを起こすことが増えたのです。
それは親子で初めて直面した壁でした。

競争心をあおって勉強させ続けた結果、娘が「自分が人より優秀であること」にこだわり、相手を自分より上か下かでしか判断できない性格になってしまったのです。

人の気持ちが考えられないため、いくら優秀でも人とうまくやれない。
そのことにE美さんは気づきました。

「いま振り返ると、勉強ばかりで人として大事なことをしっかり教えなかったことを後悔している。勉強だけじゃなく、友達ともしっかり遊んで人間関係を学ぶことも必要だったのかもしれない」とE美さん。

勉強ももちろん大事ですが、幼い頃だからこそ、人として思いやりを持つことや相手の気持ちを考える大切さを教えることも大事だったのかもしれません。

【体験者:70代・主婦、回答時期:2024年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Sana.Y
医療機関に勤めるアラフォーワーキングマザー。新卒で化粧品メーカーに入社後、結婚出産を機に退職。現在は転職し子育てと仕事の両立に励む。自分らしい生き方を求め、昔から好きだった書くことを仕事にしたくライターデビュー。化粧品メーカー勤務での経験や、会社でのワーキングマザーとしての立ち位置、ママ友との情報交換を通して美容や教育、女性の生き方を考えた情報を発信している。