夫を亡くし、シングルマザーに
私は数年前に夫を亡くし、それからは必死でシングルマザーとして奮闘してきました。大変な毎日でしたが、2人の息子たちの笑顔が私の心の支えでした。
息子たちが小学生になり、生活も少しずつ落ち着き始めた頃、私は偶然にも地元の同級生であるYくんと再会しました。
何気ない会話や、懐かしい思い出話……些細なことでも、Yくんとなら幸せを感じられることに気付き、再会から1年ほどたった時に、自然な流れで私たちは交際を始めることになりました。
少しずつ打ち解ける子どもたち
それでも、私にとって何よりも大切なのは息子たちということは変わりません。
息子たちが不安にならないよう、慎重に事を進めたいという私の気持ちを、Yくんは理解してくれました。
それからは4人で一緒に遊園地に行ったり、映画を見に行ったりと、少しずつ距離を縮めていきました。
息子たちもYくんによく懐き、Yくんもまた、息子たちを優しく見守り、自分の子どものように可愛がってくれました。
そこからさらに1年ほどの時間をかけた後、私とYくんは息子たちに再婚の意思を伝えました。
すると、息子たちは「Yくんがパパになるの? やったー!」と満面の笑みで喜んでくれました。
その笑顔を見て、「この決断は間違っていなかったんだ」と私はホッとしていたのですが……
「やっぱり前のパパがいい」
こうして私たちは、新居で一緒に暮らし始めることになりました。
しかし、新生活が始まって1か月ほど経った頃、上の息子がポツリと「やっぱり前のパパがいい……」と呟いたのです。
新しいパパができると喜んでいた息子でしたが、実際に一緒に暮らしてみると、亡くなった夫の面影がよぎったり、Yくんとの差を感じてしまったりするようでした。
幼いながらも、やはり本当の父親の存在は大きなものだったのでしょう。
器の大きい彼に感謝
そんな息子の気持ちを察したYくんは、嫌な顔ひとつせず、「パパだと思えなくてもいいよ。友達の家に泊まりに来たくらいの軽い気持ちでいいんだよ。しんどくなったら、しばらく前のおうちに帰ったりしてもいいし。とにかく無理せずいこう」と優しく声を掛けてくれました。
実際、息子がいつでも元の生活に戻れるようにと、Yくんは私たちが以前住んでいたアパートも解約せずに、家賃を支払い続けてくれていたのです。
Yくんの温かい言葉と配慮のおかげで、息子は難しい時期を乗り越えることができました。今ではYくんを本当の父親のように慕い、仲良く過ごしています。
もちろん元夫のことを忘れる日はありません。元夫のことを胸に抱きつつ、これからも息子たちの笑顔を守っていきたいと思っています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。