夫を見つめるT子の視線
T子とは趣味のサークルで知り合い、すぐに意気投合しました。何時間でも他愛のない話で盛り上がれる大切な友達でしたが、ある日、2人で飲みに行った帰りのこと。私を迎えに来た夫を、T子がじっと見つめていました。どうしたの? と尋ねると、「Aの旦那さんって、イイよね。」と、意味深な発言をするT子。その言い方が、妙に気になりました。
その後、T子に明らかな変化がありました。夫への質問がやけに増え、T子は夫の仕事や趣味、休日の過ごし方まで興味津々。最初は適当に答えていましたが、私たちの夫婦生活にまで質問が及んだ時は、さすがに背筋が凍る思いでした。
バーベキューで夫に迫るT子
数週間後、T子から「うちの庭でバーベキューをしようよ、家族ぐるみで」と誘われました。正直あまり気乗りしなかったけれど、他のサークル仲間も参加すると聞き、仕方なく参加することに。
しかしバーベキュー当日、T子宅に行くと参加者は私たち夫婦とT子夫妻だけ!「みんな急用ができたみたい」とケロッとしているT子。
「本当に誘ったのかな」と疑惑を抱きつつ、バーベキューが始まりました。私の夫にやたらと近づき、さりげなく腕や肩に触れるT子に、夫も困惑しているようです。
夫は何度か私の方をちらちらと見ては、助けを求めてきました。その度に間に入ったり、「T子をどうにかして!」とT子の夫に話を振ってみるのですが、効果はありません。
T子の夫は、妻の行動に全く興味を示さず、「Aさん、これ食べごろですよ」と、スマホを見ながら1人で淡々と肉を焼いていました。
そう言えば以前、「実は夫と上手くいっていない」と、T子が嘆いてたことを思い出しました。だからって、私の夫にベタベタするのは違うけど!
やっぱり夫を誘っていた
その日の夜、夫から「実は、T子さんから2人で食事に行こうと誘われた」と打ち明けられました。T子は夫に「相談があるの。落ち着いた場所でゆっくり話したい」と誘ってきたそうです。
もちろん夫はその誘いを断ってくれましたが、私はこの話を聞いて「やっぱり夫を狙っていたんだ」と、ショックを受けました。
それ以来、T子とは距離を置いて、彼女からの連絡は完全にシャットアウト。
裏切られたことは本当に辛かったし、「うちの夫を誘ったでしょ!」と文句を言いたい気持ちもありましたが、傍にいても心の寂しさを埋めることができない仮面夫婦のT子が、あまりに不憫に思えたのです。なによりも今回の件で、夫が正直に話してくれたことが嬉しく、ちょっと夫を見直した出来事でした。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2024年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:N.tamayura
長年勤めたブラック企業を退職し、書くことを仕事にするためライターに転職。在職中に人間関係の脆さを感じた経験から、同世代に向けて生き方のヒントになるような情報を発信すべく、日々リサーチを続けている。