エリート夫の暴力
小学一年生の息子がいる私は、夫からの日常的な暴力に悩んでいました。
彼は、いわゆるエリートで、世間からの評価も高いのですが、いったんスイッチが入ると、たがが外れたように私を殴るのです。
今のところ、私にしか手を出しませんが、いつ息子に被害が及ぶかと思うと不安で夜も眠れなくなります。かといって何の取り柄も、職もない私が、彼なしで子供を立派に育てられるかどうか。離婚ともなれば、親権さえ取られてしまうのではないかと恐ろしくなり、耐え忍ぶ毎日が続いていました。
自分さえ我慢すれば、、、
その日は特に夫の機嫌が悪く、いつもより激しい暴力が続きました。ひとしきり殴られたあと、心配する息子を抱きしめ、私はむせび泣きました。
「弱虫でごめんね。ママはだめな人間だから、パパがいないとあなたに苦労させてしまう」
息子には、経済的な負担をかけたくありませんでした。自分さえ我慢すれば、今の生活が保てるのです。
「パパなんか、いなくていい!」
「ママは弱虫なんかじゃない!」突如、息子が大きな声で泣き始めました。
「ママは、いつも僕のことを考えてくれて、とっても強いもん。ひどいことをするパパなんか、いなくていい! 僕、ママと2人で笑って暮らしたい」
息子のためを思って、今までどんな辛いことにも耐えてきました。ですが、逆にそのことで、我が子を苦しめていたなんて。私は、目が覚めたような気がしました。
決意の夜逃げ
正攻法で離婚を切り出そうものなら、もっとひどい目に遭うかもしれない。夫に恐怖心しかなかった私は、その夜、息子を連れて貴重品だけを持ち、家から逃げ出しました。私たちが家出したことに気づいた夫は、留守電やメールで帰るように、強い言葉で脅してきました。
結局、そのメッセージが証拠の一部となり、DVを理由に離婚を成立させることができました。もちろん親権者は私です。私も仕事を始め、控えめな生活ながら毎日息子と笑って過ごしています。
あのときの息子の言葉がなかったら、今もなお暴力に苦しむ日々を送っていたかもしれません。本当の幸せとはなんなのかを教えてくれ、第二の人生をプレゼントしてくれた息子には、感謝しかありません。
【体験者:30代・女性正社員、回答時期:2024年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。