そんな経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
知人のA子もその1人です。
彼女には、幼いころに大好きな人の前で恥をかかされた忘れられない出来事があります。
そのときのエピソードを、A子に語ってもらいました。
何気ない言葉が、子どもの一生を変えることもある?
A子が小学5年生のころのことです。
毎年年始には、父親の実家に親戚が集まるのが恒例行事。
A子には、特に会うのを楽しみにしている存在がいました。
3歳年上で中学2年生の従兄弟です。
彼は優しくて面白く、少し大人びた雰囲気があり、A子にとっては憧れのお兄ちゃんのような存在でした。
その年も「お兄ちゃんに会える!」と楽しみにしていたA子。
1年ぶりの再会で、彼は前より大人っぽく見え、A子は胸を踊らせました。
父の不用意な一言
親戚全員が揃い、おせちを囲んで談笑が始まりました。
大人たちはお酒を楽しみ、子どもたちも賑やかに食事。
そんな中、ある叔母さんが「うちの子、まだオムツが取れてないのよ」と打ち明けました。
その3歳の従兄弟は遊び疲れて眠っていましたが、これはよくある子育ての悩みを共有する会話。
「大丈夫よ、大人になってもオムツのままの人なんていないんだから」と、他の叔母さんも励まし、場の雰囲気は穏やかでした。
しかし、そのときです。
ほろ酔い状態だったA子の父親が突然声を張り上げました。
「A子なんて、小5なのにまだおねしょしてるぞ! なぁ、A子!」
予想外の恥ずかしさと心に残った屈辱
その瞬間、A子は頭から冷水を浴びせられたような気持ちになったのです。
確かに、小学5年生になってからも、A子は何度かおねしょをしてしまったことがありました。
それでも、それは誰にも知られたくない、A子にとっては恥ずかしい秘密でした。
だからこそ、尊敬する従兄弟に父のその言葉を聞かれてしまったことが、心の底からショックだったのです。
「笑われるんじゃないか」「軽蔑されるかもしれない」と、不安が一気に押し寄せ、胸がいっぱいになりました。
恥ずかしさで顔が真っ赤になり、涙がこみ上げてきそうになるほどでした。
場は一瞬でシーンと静まり返り、すぐに叔母さんたちが「ちょっと! 無神経にもほどがあるわよ!」と父を叱りつけました。
父もさすがに反省する様子を見せましたが、A子の心に刻まれた恥ずかしさと屈辱は、その後もずっと消えることはなかったのです。
子どもに同じ思いをさせないために
親の何気ない一言が、どれほど子どもの心に傷を残すか、A子は身をもって知っています。
今となっては、あのときの父には悪気がなく、場を盛り上げようとしただけだったと理解できるようになりました。
それでも、あのときの言葉はA子の心に深く刻まれ、今も忘れることができません。
だからこそ、母親となった今、A子は心に誓っています。
「自分の子どもには、あんな思いを絶対にさせたくない」と。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。