配送員として働くA子は、毎日の配達中にそうした危険な瞬間を何度も経験しています。
仕事柄、道路での予測できない出来事には慣れているつもりですが、それでも心臓が止まりそうな瞬間がありました。
ある日、配送先の住宅街で、A子は思わず息を飲むような出来事に遭遇したそう。
今回は、そのときの体験をA子に語ってもらいました。
配送員A子の不安な日常
配送員として働くA子は、郊外の住宅街を中心に毎日車で走り回っています。
配達先に向かう途中、道路で遊ぶ子供たちを見かけることが少なくありません。
袋小路の道路では、キャッチボールをしたり、キックボードや自転車で走り回ったりと、無邪気に遊ぶ姿が目立ちます。
最近では公園が減っているので、子供たちが家の近くで遊ぶのも仕方ないかもしれない。
A子はそう思いながらできる限り慎重に運転をしています。
それでも、道路での遊びはヒヤリとする瞬間が多く、不安を感じることもしばしば。
自宅の近くがA子の担当エリアなため、A子の息子が通う小学校と同じ校区内の配達先が多く、遊んでいるのは近所の子供たちです。
「ご近所さんだから、あまり強く注意できない」という思いもあり、対応に悩む場面が少なくありませんでした。
あと数秒の差!? 事故寸前の恐怖
そんなある日のこと。
A子がいつも通り袋小路の住宅に配達に向かうと、小学生の男の子たちがキャッチボールをして遊んでいました。
「またか」と気を引き締め、慎重に車を進めたその瞬間、ボールが転がり、1人の男の子が追いかけて道路に飛び出して来たのです。
反射的にブレーキを踏み込んだA子の車は、わずか数十センチ手前で止まりました。
ハンドルを握る手は冷や汗でにじみ、心臓がドキドキと高鳴ります。
男の子は何ごともなかったかのようにボールを拾い、再び遊びに戻っていきましたが、A子はしばらくその場から離れることができませんでした。
A子の決断「その場での注意」
「もし間に合わなかったら、取り返しがつかなかった」A子はその思いを振り払えず、車を降りて子供たちに声をかけました。
「ここで遊んではいけないよ! 次は本当に事故になるかもしれないから、気をつけてね!」
驚いたような顔をした子供たちは静かにうなずき、その場を離れていきました。
A子は「怪我させなくて良かった」と胸を撫で下ろしましたが、「これが最後とは限らない」という不安が拭いきれません。
地域の絆と子供の命「大人の役割」とは
A子自身も子供の親なので、保護者が忙しくて公園に連れていけない事情や、遊び場が減っている現状を理解しています。
それでも、道路は子供が遊ぶべき場所ではありません。
ご近所付き合いのことも頭をよぎり、最初は声をかけるのをためらいましたが、子供たちの行為はあまりにも危険だったため、意を決して注意することにしました。
「次こそ事故が起こるかもしれない」と思うと、見過ごすわけにはいかなかったのです。
今回は、危うく最悪の結果になりかねないところで事なきを得ましたが、こうした場面がいつまた起こるかわかりません。
子供の命を守るのは大人の役目です。
大人一人ひとりができることを考え、行動することが未来の事故を防ぐ大きな力になるのではないでしょうか。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。