これは、筆者の友人Aから聞いた話です。
公民館で開催された手作りアロマキャンドル教室に、赤ちゃんを連れて参加したA。
慣れないワンオペ育児に疲れてしまい、少しでも外の世界と関わりたかったのです。 しかし、その日は思いがけないハプニングに見舞われることに……。

おじいさんの温かい言葉に救われた

その時、近くのソファで本を読んでいたおじいさんが立ち上がるのが見えた。
そして、Aをにらみつける男性に静かに話し始めた。
「なあ、あんただって昔は子供だったろうに。少しの泣き声で目くじらを立てて、みっともない。泣いたり笑ったり、いろんな音を出して大人になっていくもんだろ?」
その言葉を聞いた男性は、Aの泣き顔を見てハッとした表情に。そして気まずそうに「ええ、まあ」と返事をした。

「お母さんも、この子も、必死に生きているだけなんだよ」
そう呟き、おじいさんがAの方へ歩いてきた隙に、男性は逃げるように部屋に戻っていった。
おじいさんは、心の奥に届くような温かい声で「まあ、赤ちゃんは泣くものさ。大丈夫。うん、あんたは大丈夫だから。さっきはつらかったよなあ」と、優しくAに語りかけた。

その語り口があまりにも優しくて、Aの目には、あとからあとから涙が。「あ、ありがとうございます……」と、震える声で伝えるのがやっとだった。

その日の出来事はAの心に温かな灯火をともし、忘れられない一日となったそうです。

【体験者:30代・主婦、回答時期:2023年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:N.tamayura
長年勤めたブラック企業を退職し、書くことを仕事にするためライターに転職。在職中に人間関係の脆さを感じた経験から、同世代に向けて生き方のヒントになるような情報を発信すべく、日々リサーチを続けている。