自己破産した母との絶縁
M子(40代)の母、S美(60代)は、20年前に自己破産した過去があります。
当時のS美は、物を買うことに異様に固執していました。毎月カード上限まで買い物をしては、他から借金をしてリボ払いに充てる生活。
ついにどこからもお金が借りられなくなり、カードが止まってしまったS美は、M子にお金を無心するようになりました。
片親で育ち、我慢することも多かったM子は、母を想う気持ちもありながら、身勝手なS美を軽蔑していました。
しかし親を見捨てるわけにはいきません。
結局、いつかの結婚資金として貯めていた大切な貯金を全て使い、S美の借金を清算。
その代わり、二度とお金の面倒はみないと宣言し、母と縁を切ったのです。
母と同じ、買い物依存症に
月日は経ち、当時の母と同じ年齢になったM子。彼女は、あんなにも嫌悪していた母と同じ、買い物依存症になっていました。
物が欲しいというより、買う行為自体に快感を覚える。買っている間だけは気持ちが高揚し、ストレスから解放されるのです。それが、高額であればあるほど―。
毎日が寂しくて、怖い。自分が制御できずに苦しむM子は、ずっと理解できなかった母の葛藤が分かったような気がしました。
母だって、相当辛さを抱えていたのかもしれない……。
無性に母が恋しくなったM子は、気づけばS美に電話をかけていました。
「もしもし、M子なの?」記憶よりずっと老いた声を聞くと、M子は涙が止まりませんでした。
母との再会
娘の状況を聞いたS美は、彼女の口座にすぐにお金を振り込んでくれました。
こんな大金を、あの浪費家の母が持っていることに驚いたM子に「大切な結婚資金、使っちゃったでしょう。本当に後悔して、ずっと返したくて、貯めていたのよ」とS美は言いました。
そして母と再会しました。連絡を取らなかった間、母は買い物依存症の治療プログラムを受け、少しずつお金の管理ができるようになっていったそうです。
「私きっと結婚しないから、もう必要ないよ」と、泣き笑いするM子を、S美はギュッと抱きしめ、ごめんねごめんね、と繰り返しました。
その後
現在、M子はS美に支えられながら、心の治療を受けています。
どうしても拭えない遺恨を時々爆発させながら、それでも、昔甘えられなかった分を取り戻すかのように、母との時間を大切にしています。
前に進むためにも、また、いつか後悔しないためにも、母と、そして自分自身と、長い時間をかけて向き合っていくそうです。
親子関係というものは複雑で、お互いが大切だからこそ生まれる確執もあると思います。友人として、この親子の幸せを心から願っています。
【体験者:40代・女性無職、回答時期:2024年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。