私たちの生活はさまざまな仕事をしている人に支えられています。でも中には、その仕事自体に不満を持っている人もいるようで……。これは筆者が実際に体験した『ふてぶてしい配達員さん』のお話です。

後遺症

私は4年ほど前に乳がんの全摘手術を受けていて、リンパ節郭清も行ったため、手がむくみやすい状態にあります。
病院の先生からは「重たいものを持ってはダメ」「リンパマッサージを欠かさずに」と言われ続けていて、確かに、お米や飲料など、重たいものを持つと次の日に腕が重だるい感じになってむくんでしまっていました。

ある日、夫が東北に住む友人に連絡し、お米を宅配で届けてもらうようお願いしてくれました。
大食いの夫と食べ盛りの息子のために、この友人に1回に頼む量は30キロ!
小分けにせず、玄米の状態で茶色い米袋に入れて送ってくれていたのです。

令和の米騒動

今までは某宅配便の男性ドライバーさんが届けてくれていたのですが、3ヶ月ほど前から中年の女性に担当が変わりました。
男性ドライバーさんのときはトラックでの配送だったのですが、この女性が乗っているのは軽貨物。

最初の配達時に「担当が変わりました。」と挨拶をされましたが、あまり笑顔のない感じの悪い人でした。
ちょうど令和の米騒動でお米が店頭から消えた頃、他県に住む妹から「お米が買えなくて困っている。」というSOSが。
夫の友人に確認すると、配送先が1ヶ所で良ければ50キロまで送れると言ってくれたため、一旦我が家へ送ってもらい、妹の家におすそ分けすることにしました。

配達

3日ほど経った頃、私が買い物から帰って来て車庫に車を停めていると、車体にロゴが貼られた宅配便の軽貨物が私の家の前に停まりました。
そこから降りてきたのは例の女性配達員。
私の顔を見るなり「お荷物です!」と怒鳴るように言い、後ろのドアを開けてお米を取り出していました。

私は急いで先に玄関へ行き、ドアを開けた状態で待っていると、「ここでいいですか?」とドアの前におろそうとしたので、「すみません、玄関の中まで良いですか?」と言うと、ものすごい顔で私を睨みこう言ったのです。

「重いんですけど!」

私は「すみません、ちょっと重たいものが持てないので、お願いできますか?」と言うと、はぁっと大きなため息をつき、無言で玄関の中に投げるようにお米を置きました。
「もう一つあるんで。」と吐き捨てるように言い、車へ戻って行ったのですが、なかなか持ってきませんでした。

前任者

私が玄関でずっと待っていると、トラックの音がして、以前の担当の男性ドライバーが通りかかりました。
私の顔を見ると「お世話になってます!」と声を掛けてくれたのですが、家の前に停まっている同じ会社の軽貨物を見て、トラックを停めて降りてきてくれたのです。

すると「何しているんですか?!」と男性ドライバーの大きな声が。
私も車の方へ寄って行くと、女性の配達員が他の荷物を奥の方へ投げていて、私の家の荷物を引き出そうとしていました。
男性ドライバーは驚いて「いいです! 僕がやりますから!」と言って、我が家のお米を持ってきてくれました。

謝罪

男性ドライバーは「申し訳ありません。こちらで注意しますので。」と言って、車に戻って行ったのですが、その後女性の「重いんです!」と言う怒声が聞こえました。
男性ドライバーの「無理なら結構です! でも荷物を投げるのは言語道断ですよ!」と怒鳴る声も。
男性ドライバーは私の方に再度お辞儀をして、軽貨物の女性と一緒に去って行きました。

来月もお米を頼むつもりですが、今度は誰が持ってくるのでしょう。
荷物が重たくて大変な仕事だというのはわかりますが、大切な荷物を雑に扱っていい理由にはなりませんよね。そして最近、家の近所をあの女性の軽貨物は走っていないので、もしかすると男性ドライバーに戻るのかもしれません。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2024年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。