最低なのは、どっち?
しかしすぐに「袖口の加工とかお洒落だよね」とフォローの声が上がりました。
納得のいかないSは「だってこんな安っぽい……」と続けますが、その言葉を遮ったのはママ友のK子。
「Sってさ、ダサいよね」
「え? どういう意味よ?」不満げなSに、K子は静かに「人のおしゃれを笑う心がダサい」と答えます。
「はぁ?!」声を荒げるSに、K子は真剣な顔で「『もしM美がこの服を気に入って着てたら』って思わないの?」と一言。
SはK子を睨み「そんなことちゃんと分かってるけど!」と反論します。
怒るSをよそに、K子がM美に「このパーカー、〇〇のものでしょ?」と優しく問いかけると、M美は嬉しそうに「そうなの! よく分かったね」と声が弾みます。
「私も好きなブランドだし。質が違うよね。Sはこういうの興味ないんだっけ?」とニッコリ。
するとSは顔を真っ赤にして「人の服の趣味をバカにするなんて最低!」と叫びますが、K子は「自分だってM美の服をむやみにバカにしたでしょ? 同じことをされて嫌だったら、もうしない方がいいわよ」と一蹴。
ムキになったSは「だいたい、公園に高い服を着てくる方がおかしい! 見せびらかしたいわけ?」
するとK子は「見せびらかすって、 その発想もよくないよ。自分の好きな服を着ていて何か悪いことがあるの?」と返します。
「もういい!」怒ったSは、子供の手をひきその場を去っていきました。
Sは悪気なく思ったことを口に出しただけかもしれませんが、その言葉で傷つく人がいることを考えてもらいたかったですね。K子もかなり鋭い物言いでしたが、前々からSのマウント発言を苦々しく思っていたので、あえてきつい言い方をしたそうです。
そして、M美が帰っていくSの姿をよく見ると、着ていたニットの裾が毛玉だらけなのを発見。
「どっちが部屋着なんだか」M美は少し呆れた顔でSの背中を見送りました。
好きで身に着けている物を人から否定されるのは、とてもつらいことです。
Sもそのことに気づいてくれるといいな、と思っています。
【体験者:30代・主婦・回答時期:2023年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:N.tamayura
長年勤めたブラック企業を退職し、書くことを仕事にするためライターに転職。在職中に人間関係の脆さを感じた経験から、同世代に向けて生き方のヒントになるような情報を発信すべく、日々リサーチを続けている。