筆者の知人Mから聞いた話です。Mが娘Yを連れ写真館の七五三撮影へ行くと、ママ友T子に遭遇。Mがレンタル着物で撮影だと知ったT子は、買ってもらった着物を自慢します。ところが、撮影が始まると予想外の展開が……。

七五三の前撮り撮影で

娘を連れ、写真館へ七五三の前撮り撮影にやって来たM。
奥の部屋に高級そうな着物を着た娘を連れたT子の姿を見つけ、ため息をつきました。
T子は日頃から自慢話が多いママで有名だったのです。

受付にいるMを見つけたT子が近寄ってきました。
「Yちゃんもこの写真館なんだ? うちは姑に着物を用意してもらったの。Yちゃんは?」

T子が何を言いたいのか察しがつきました。
Mが写真館で着物をレンタルしたことを知った上で、わざと聞いているのです。
「うちは娘が気に入った着物があったから、レンタルにしたの」
それを聞いたT子は「え! 一生に一度なのに? レンタルで済ませるんだ?」と大袈裟に驚きます。
写真館のスタッフも顔を上げ、困惑した表情でT子を見ていました。

T子親子の撮影

通路を挟んだ部屋で撮影が始まったT子親子。
Mが娘の着付けを見ていると、時々T子の声が通路に響いてきます。

「ねえ! 何で笑わないの!?」「帰りにケーキ買ってあげるから!」
どうやらT子の娘、Kは上手に笑顔が作れないようでした。
カメラマンの「緊張しないでね」という優しい声に混じって、Kのすすり泣く声が聞こえてきます。

暫くすると、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたKの手を力なく引くT子が部屋から出てきました。
着付けが終わったMの娘はT子親子に気づき
「わあ! Kちゃんの着物きれーい!」と駆け寄ります。

「ほんと? Yちゃん」としゃくり上げながら、Kは着物をつまんでみせます。
「うん! でもなんで泣いてるの?」
「ママが何回も笑えって言うから、でも笑えなくて、どうしようって……」

娘の反応に、T子は?

ハッとした顔で娘を見つめるT子。顔はみるみる紅潮し、目には涙が溢れています。
「でもKちゃん、さっき笑ってたよ?」
「ええーそうかなあ?」

このやり取りを見ていたカメラマンが走ってきました。
「今なら撮れるかもしれません!」
「Mさん、少しだけお待ちいただけますか?」
「もちろん、一生に一度ですからね」と答えるM。
「ごめんなさい。私……」と言葉に詰まるT子をMは笑顔で制し、「さ、早く済ませてよ!」とT子親子を笑顔で見送りました。T子にも悪気はなかったのでしょうが、人にマウントを取るよりも、もう少し娘の気持ちに寄り添ってあげて欲しかったですね。

【体験者:30代・専業主婦、回答時期:2024年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:N.tamayura
長年勤めたブラック企業を退職し、書くことを仕事にするために転職した駆け出しライター。在職中に人間関係の脆さを感じた経験から、同世代に向けて生き方のヒントになるような情報を発信すべく、日々リサーチを続けている。