A子の姑は、他の人に物事を任せることができず、何でも仕切りたがる性格でした。
そのため、ときには恩恵を受けることもあり、A子は感謝していたのですが、周りの意見を受け入れないことには頭を抱えていました。
今回は、知人のA子から聞いた姑とのエピソードをご紹介します。

七五三を巡るA子の悩み

秋が訪れ、A子は7歳になる娘の七五三を迎えることになりました。

本当であれば喜ばしい行事のはずですが、A子の気持ちはどんよりとしていました。

というのも、七五三のお祝いのすべてを姑が仕切っており、写真撮影や食事の手配まで決められていたのです。

A子は感謝の気持ちを持ちながらも、心の中では「自分たちのペースで進めたい」と感じていました。

さらに、もう一つ、A子には気がかりなことが。

結婚前に母親を亡くしたA子の実家には、今体調の悪い父親が一人暮らししています。

その父親に、どうしても孫娘の晴れ姿を見せてあげたいとA子は切に願っていました。

姑の反対とA子の葛藤

A子は、自分が七五三で着た思い出の着物を娘に着せて、実家で父親に見せることを計画。

姑にそのことを相談しました。

しかし、帰ってきた言葉は予想外のものでした。

「七五三のお祝いは一度で十分。非常識だし、そんなことする必要ないわ」

姑の言葉にA子はショックを受けました。

家族のことを考え、父親の感謝を込めた提案だったのに、頭ごなしに否定されるとは思っていなかったのです。

感謝と息苦しさが入り交じるA子は、反論することもできず、気持ちを押し殺すしかありませんでした。

父親の提案で見えた光

悩んだ末、A子は実家の父親に相談。

すると父親はこう提案しました。

「じゃあ、正月に帰省したときに着物を着せたらどうだい?」

その瞬間、A子は「これなら誰にも迷惑をかけることないし、父親にも孫娘の姿を見せることができる」と心が軽くなりました。

七五三のお祝いは姑の言う通りに進め、正月には父親にも晴れ姿を見せることができる。

これこそ完璧な解決策だったのです。

正月に叶った家族の時間

正月、A子は娘の着物を持って実家に帰省しました。

静かに準備を進め、父親に孫娘の晴れ姿を見せると、父は目を細め、

「A子の七五三のときも、こんなふうに可愛かったな」

と嬉しそうに微笑みました。

姑の期待に応えつつ、父親にも孫の姿を見せることができたA子は、父親の提案のおかげで心が晴れました。

姑も悪気があったわけではなく、調整が難しかったのでしょう。

A子は父親への思いと姑への配慮を両立させ、家族全員が満足する形にまとめたのです。

お互いの気持ちを尊重しながら折り合いをつけることが、家族円満の秘訣かもしれませんね。

【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。