珍しい手土産
Tさんは旦那さんと小学生の息子との3人暮らし。
義実家との関係は良好で、休みの日には義両親が家に遊びに来ることもよくありました。
ただしいつも義両親と一緒に遊びに来る旦那さんのお姉さんだけが少し苦手で、正直なところあまり来て欲しくないな、と思っていました。
「Tさんこれもういらないでしょ? ちょうだいね!」
「は、はい……」
義姉は超がつくほどドケチで、Tさんの家にやってきては家の中のあちこちを漁り、Tさんの服や小物、もらいもののお菓子や買い置きのカップ麺などを欲しがるのです。
当然手土産などは持ってきたことがなく、ただ義両親についてくるだけ。来ないでくださいとも言えず、Tさんは困り果てていました。
そんなある日、また義両親と義姉がTさんの家に遊びに来ました。
「はい、Tさんこれみんなでどうぞ」
なんと珍しいことに、義姉が手土産を持ってきたのです。
パウンドケーキの秘密
「わあ、ありがとうございます!」
珍しく義姉が持ってきたのは、義実家の近所で有名なお店のパウンドケーキでした。
「切り分けますね」
「ああ、私はいらないわよ。あとでみんなで食べて」
切り分けようとすると、なんでもよく食べる義姉がこれまた珍しく、いらないと言います。
何かおかしいと思いながらTさんがそのパウンドケーキの包み紙を見ると、賞味期限が書いてあるシールが目に入りました。
「え、なにこれ!?」
なんとそこに書いてある賞味期限の日付は、2週間も前でした。
普段は少しくらい期限が切れていても気にしないTさんでしたが、2週間となるとさすがに切り分ける気にはなりませんでした。
「お義姉さん、このケーキどうしたんですか?」
勇気を出して聞いてみると、義姉はケロッとした顔で答えました。
「賞味期限間近で安売りしていたのを、沢山買って置いてたのよ。誰かの家に行く時に持って行こうと思って。結局余っちゃって、これが最後の1本よ。期限切れてるけど身内ならいいかなーって」
Tさんはそれを聞いて、もったいないけれどケーキは処分したそうです。
節約したい気持ちはわかりますが、いくら身内とはいえ、期限切れのケーキを平気で渡す神経がわかりませんね。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。