12年一緒にいた愛犬
Yさんは近所でも有名な愛犬家。毎日朝と夕方に愛犬を連れて散歩を欠かさず、たまにドッグカフェに連れて行ったり、定期的にドッグランに連れて行ったりととてもかわいがっていました。
しかしそんな愛犬が、突然の病で命を落としてしまったのです。
「大変だったわね……」
いつもの散歩コースでよく顔を合わせていた愛犬家仲間たちは、皆Yさんを慰めに来てくれました。
「12年も一緒にいたから、急にいなくなるとどうしたらいいのか」
Yさんは愛犬を失ってから、悲しみで眠れない日が続いています。
「完全にペットロスね、お気の毒に」
愛犬家仲間たちはげっそりとやつれたYさんを気遣い、手作りの食事を差し入れたり綺麗なお花を愛犬の遺影の前に供えたりしてくれました。
無神経な発言に……
「Yさん、ペットロスって聞いたけど大丈夫?」
ある日愛犬家仲間のひとりで、小型犬を何匹も飼っているKさんという女性がYさんの自宅にやってきました。
「ええ、なんとか……」
青ざめた顔をしたYさんを見て、Kさんはあきれたように言いました。
「いつまで落ち込んでるの、次の子を買えばいいじゃない!」
「え?」
「ほら早く、ペットショップ行きましょ!」
Yさんは耳を疑いました。Yさんにとって亡くなった愛犬はかけがえのない存在で、代わりなどはいません。
それに今はとても新しい犬を迎えることなど考えられなかったのです。
「犬なんていくらでもいるじゃない。ね、だから行きましょ」
「悪いけど、帰って」
励まそうとしてくれたのだとは思いますが、同じ愛犬家とは思えないKさんの発言に、Yさんはげんなり。ペットショップはお断りし、それからKさんとは距離をおいたそうです。
ペットは家族と同じですから、代わりがいなくて当然です。すぐに代わりの犬を飼ったとしても、悲しみは埋められませんよね。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。