ご近所さんとのお付き合いは、時に面倒に感じることもあります。実は筆者もその一人でしたが、今ではとても感謝をしている優しいご近所さんと出会うことができました。筆者が体験した優しい言葉をかけてくれたご近所さんとのエピソードをご紹介します。

ご近所のTさん

私の家の近所には、私の息子を実の孫のように可愛がってくれるTさんというおばあちゃんがいます。
Tさんはすでに90代半ばですが、そうは見えないほどしっかりとしていて、一人暮らしを続けている人です。

息子が小学校3年生のときに不登校になったときのこと。
昼間から家にいる息子のことを色眼鏡で見る人が多い中、Tさんは「お母さんのお手伝いして偉いじゃない!」「子どもと一緒にいられる時間なんてほんの少しなんだから、この時間は宝物ね!」など、あたたかい声かけをしてくれていました。

Tさんの人生

あるゴミの日のこと。
Tさんが我が家の前を重そうにゴミ袋を抱えて歩いていたので「持ちますよ!」と声を掛けると、Tさんは「これもリハビリなのよ。ありがとね。」と言って、ゴミを出しに行こうとしました。
ちょっとふらついた様子があったので、私も自分の家のゴミを持って一緒に行くと、Tさんと立ち話することができたのです。

Tさんはいろいろなことを話してくれました。
Tさん自身が双子だったけど妹さんを早くに亡くしたこと、結婚しても子どもには恵まれず旦那さんを60代で亡くしたこと、3年ほど前にパーキンソン病を患いリハビリ中ということ。

Tさんは「K君(私の息子)はとってもいい子よ。もし私に孫がいたら、K君みたいな子が良かったなぁって思って、勝手におばあちゃん面してるのよ。」と満面の笑顔。
親戚と呼べる人が一人もいないので今まで寂しかったけど、私の息子と話す時間でとてもあったかい気持ちになると言ってくれたのです。

嬉しい言葉

息子が不登校の状態であること、近所には心無い言葉をかけてくる人もいることを相談すると「関係ないわよ! 大丈夫! あの子はいい子だから!」と言われて、私は涙が出てきてしまいました。
すでに祖母も母も亡くしたことを話すと「頼りないけど、私はK君のおばあちゃんのつもりよ!」と言ってくれたのです。

私は正直ご近所づきあいが苦手でした。
でもTさんのように、あたたかく見守ってくれる人もいるのだということを知って、とても嬉しく思いました。

息子の気持ち

その後もTさんは、顔を合わせるたびにやさしい声かけをしてくれます。
息子もTさんが大好きで「Tさんに会うと、ばあば(私の母)を思い出すね。」と言っています。

他人なのにここまで優しくしてくれるTさんの存在は、私たち親子にとってかけがえのないもの。
Tさんにはいつまでも元気でいてほしいと思っています。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2024年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。