元気だった知人K子の祖母が寝たきりとなり、自宅介護の生活が始まりました。認知症が進み、K子のことすら忘れてしまった祖母にあることがきっかけで奇跡が起きたのです。その感動的なエピソードとは──。
今回は、筆者の知人K子から聞いた話をご紹介します。

元気だった祖母が一転、寝たきりに

K子の祖母は当時91歳。毎週3回グラウンドゴルフを楽しむほど元気で、どこにいてもおしゃべりが絶えない明るい人でした。K子とも毎日のようにいろんな会話をしていました。

そんな祖母がある日、庭で石につまずいて転倒してしまったのです。その衝撃で頭を打ち、脳梗塞を発症。幸い命は助かりましたが、それ以降は寝たきりになり、会話もままならない日々が続きました。

K子の3年間の介護生活

祖母が寝たきりになってから、K子と家族の自宅介護の生活が始まりました。約3年間、祖母の世話をし続けたK子。最初は会話も少しできていた祖母も、次第に認知症が進行し、K子のことすら分からなくなっていきました。祖母は日に日に表情が乏しくなり、反応も薄れていきました。

視力を失った叔母の帰省

そんな日々が続く中、祖母のかかりつけ医から「もう長くないだろう」と告げられました。K子がそのことを叔母に伝えると、10数年ぶりに遠方から帰省することに。

当時60代の叔母は40代から病気で徐々に視力を失っており、祖母はそのことをずっと気に掛けていました。祖母が認知症になる前から、娘のことを心配していたのです。

帰省したその日、叔母は祖母のベッドに近づき、そっと手を取りました。「お母さん、わかる? 私よ」と声を掛けると、なんと祖母は目をしっかりと見開き、「わかる、わかる」と涙を流したのです。

最近は表情も乏しくなってきた祖母が、その瞬間だけは、まるで元気だった頃に戻ったような生き生きとした表情をしていました。