基本的な食事のマナーは身に着けておくべきとよく言われていますよね。ですが、マナーばかり気にしていると、窮屈に感じて食事が楽しめなくなってしまうという人もいます。今回はマナーとは一体何のためにあるのかを知るきっかけになった出来事を経験した、筆者の知人Hさんから聞いたお話です。

「……ねえ、Hさん」
コースメニューの中盤で、上司は困った顔をして箸を置きました。
「その食べ方は恥ずかしいわ、他のお客様の前で。お箸の持ち方も器の持ち方も、マナー違反よ」
「す、すみません」
上司は真っ赤になったHさんに、優しく言いました。
「食事のマナーは、一緒にいる人に恥をかかせないためのものでもあるのよ。私に恥ずかしい思いをさせてしまったと思うなら、これから気をつけてね」
「はい」
それから上司は正しいお箸の持ち方や食べ方のマナーを、ゆっくりと時間をかけてHさんに教えてくれました。

実はその上司は、他の人から新人の中に食事マナーに無頓着な女性がいると聞いて心配になり、Hさんをランチに誘ってくれたそうです。

それからHさんはマナーに気を付けるようになり、今ではとても美しい所作で食事ができるようになりました。

マナーは誰に披露するものでもありません。ですが、一緒にいる人に恥をかかせないためにも、基本的なマナーくらいは身に着けておいた方がいいですね。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2024年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。