基本的な食事のマナーは身に着けておくべきとよく言われていますよね。ですが、マナーばかり気にしていると、窮屈に感じて食事が楽しめなくなってしまうという人もいます。今回はマナーとは一体何のためにあるのかを知るきっかけになった出来事を経験した、筆者の知人Hさんから聞いたお話です。

食事のマナーが大嫌い

当時Hさんは20代で、就職したばかりでした。

社会人になってから家族以外の人と食事をする機会の増えたHさんは、数人の人からお箸の持ち方や姿勢、お皿やお椀の扱い方など、食事のマナーについて指摘されていました。

もともと食事のマナーという言葉に疑問を覚えていたHさんは、指摘されるたびにこう答えていたのです。
「マナーが悪くても恥ずかしくないし、食事は好きなように食べた方がおいしいでしょ」

周りの人から何度指摘されてもHさんは自分の主張を曲げず、一般的にはマナーが悪いとされている食べ方を改めることはありませんでした。

むしろみんながマナーを気にして食事をする方がおかしい、とすら思っていたのです。

上司に誘われて

そんなある日、Hさんは上司にランチに誘われました。
「わあ、部長とランチに行けるなんて光栄です!」
その上司はHさんが勤めていた会社では初めて女性管理職に就いた女性。バリバリ仕事ができるうえに人柄も良いことから、皆に慕われている人でした。

例にもれずHさんもその上司を尊敬していて、ランチに誘われた時は気分が舞い上がるほど。

「ここ、予約したのよ」
「わあ、すごいお店……」
上司がHさんを連れて来てくれたのは、会社からすこし離れた場所にある、格式が高い和食の名店でした。

マナーは何のため?

「さあ、いただきましょう」
「い、いただきます!」
ランチコースとはいえ、普段は口にすることもできないような豪華で美しい料理が目の前に並び、Hさんはウキウキと箸をつけました。