接客業は店側とお客様の間に信頼関係が必要とされることがあります。信頼関係があるからこそ、お金を払ってサービスを受けたいと思うものですが、稀にその信頼関係を破壊する行為をする人もいないとは限りません。今回はあるお店で店員さんと意外なトラブルに発展してしまった経験のある筆者の知人、Nさんから聞いたお話です。

忘れ物はないと言われて

「すみません! お財布の忘れ物ありませんでしたか?」
1軒目の居酒屋に戻り、店員さんに尋ねました。
「いえ、お席を片付けた際にお忘れ物は見当たりませんでした」
「えー、おかしいな……」
「ほんとにこの店に忘れたの? 家に忘れてきたんじゃない?」
同僚にそう言われ、Nさんはスマホの画面を同僚に見せました。
「財布にGPSタグをつけてるんだけど、この店の中にあるのは間違いないみたい」
実はNさん、忘れ物があまりに多いため、財布に小さなGPSのタグを入れていたのです。確かにNさんのスマホには、そのタグがこの居酒屋にあることを示していました。

「ちょっと鳴らしてみるね。どっかのスキマに入っちゃってるのかも」
そのGPSタグはスマホで操作すると音が鳴る機能がついているため、Nさんは音を鳴らすボタンをタップしました。
「あっ!」
すると目の前にいる店員さんが身に着けているエプロンの大きなポケット周辺から、GPSタグの電子音が鳴り響いたのです。

「す、すみませんでした!」
店員さんは真っ青な顔でエプロンのポケットから財布を取り出しました。それは間違いなく、Nさんの財布でした。

「何の騒ぎ? お客様、どうされましたか」
慌てて飛んできた店長さんに事情を説明すると、店長さんは店員さんから財布を取り上げ、Nさんに返して深く謝罪しました。
「監督不行き届きです、大変申し訳ございません!」
それからその店員さんはすぐに、店長によって奥に連れて行かれました。無事に財布は返ってきたものの、客の財布を盗みかけ、店の信用を傷つけた店員さんは、かなり重い処分が下されたことでしょう。

「財布が戻って来たからいいけど、こういうこともあるんだし、これからはほんとに忘れ物に気を付けてよね!」
Nさんは同僚にきつく叱られたそうです。

店員さんに財布を盗まれかけたというショックで、Nさんはそれからはさらに忘れ物をしないように気を付けるようになったとのこと。

全ての人を疑うのは良くありませんが、まれに出来心で人のものに手をつけてしまう人がいることもあります。自分の持ちものはしっかりと管理しましょう。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年6月】

※窃盗・詐欺は犯罪行為です

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。