忙しさに追われる日常の中で失っていた笑顔、そしてその先に見つけたものとは──? 何があったのかA子から話を聞きました。
ワンオペ育児のリアル
友人A子は、4人の乳幼児のワンオペ育児に疲弊しきっていました。「1日」を何とか乗り切ることで精一杯。子どもたちに優しく接する余裕もなく、家事も育児も何もかも中途半端になりがちの日常に苛立ちや焦りばかり募っていました。
そんな中、春が訪れ、一番下の3歳の長男が幼稚園にバスで通うことになりました。A子は長男を幼稚園に送り出すことで少しでも時間を作り、やり残していた家事を片付けることだけを考えていました。
慌ただしい日常と失われた笑顔
A子は生活の全てを子どもたちのために捧げていました。
一から手作りした食事におやつ。そして虫歯にならないように1人10分の朝晩2回の仕上げの歯磨き。朝は6時に起床し6時45分には朝食を済ませ、幼稚園の準備、そして送迎。おやつをすませた後にしばらくして、17時半に夕食をすませて18時に入浴。19時にはベッドに入り、絵本の読み聞かせ。そして19時半には就寝──。
A子の計画は、子どもたちのためを思った理想的なものでしたが、相手はまだ幼い子どもたちです。予定通りに進むことなどほとんどありません。しかし、A子は計画通りにやり遂げることが子どもたちのためになると信じて疑いませんでした。
そのため、A子はいつも子どもたちを急かしてばかり。毎朝、長男の支度や朝ご飯の際には、イライラしながら「早くして!」と声をかけていました。
バスに乗せるとホッと一息つくのが常で、長男を見送った瞬間の開放感だけが彼女の日々の救いでした。しかし、その忙しさの中で、A子の笑顔は長男がバスに乗るときだけになっていたのです……。
長男の言葉にハッとさせられる
そんなある日、幼稚園から帰ってきた長男が「ママはボクがバスに乗るとニコニコするの?」と尋ねてきました。この言葉にA子は「ハッ」としました。長男と過ごすとき、イライラした表情か疲れ果てた表情しか見せていなかったことに気づかされたのです。
そして、唯一笑顔を見せるのは、長男が幼稚園バスに乗る瞬間だけ──。
この事実にA子は胸を締め付けられる思いでした。