冠婚葬祭にはいくつかマナーがありますが、事前に調べておくか、実際に経験しないとわからないことも多いのではないでしょうか。今回は経験がなかったが故に、お通夜で大恥をかいてしまった筆者の知人、Kさんに聞いたお話です。

通夜振る舞いの席で……

「Kちゃんもうお酒飲める年になったのよね」
「あ、はい。いただきます」
目の前のグラスにビールを注がれ、Kさんはおずおずと手に取りました。

「本日は亡き〇〇のために……」
喪主である親戚の挨拶が始まり、皆神妙な顔でそれを聞いています。
「では」
喪主の挨拶が締まりそうだったので、そろそろかな、とKさんはグラスを持ち上げました。そしてつい飲み会のノリでグラスを掲げ、大きな声でこう言ってしまったのです。
「乾杯!」
そう言いながら向かいに座っている人のグラスにビールのグラスをカチンと当てると、思っていたより音が大きく響き、周りがシーンとしてしまいました。
乾杯と言ってグラスを合わせたのは、その場でKさんひとりしかいなかったのです。

「え!? みんな乾杯しないの?」
キョロキョロと辺りを見回すKさんに、隣りに座っていた従姉妹が耳打ちしました。
「あのね、Kちゃん、こういう場では『献杯』って言って、グラスは掲げたり合わせたりしないんだよ」
「そ、そうなの? 知らなかった」

その後何事もなかったように皆穏やかに話しながら通夜振る舞いのお寿司をつまんでいましたが、Kさんだけは耳まで真っ赤になったまま、何も食べられなかったそうです。

知らないことが多い冠婚葬祭でのマナーは、参列する前にある程度調べておいた方が良いですね。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子