雨が降る中、バスを待っていると……
A子が最寄りのバス停で、いつものようにバスを待っていたときのことです。バス停にはA子を除いて、5人ほどの男女が待っていました。この日は雨が降っていたのですが、屋根のないバス停だったため、全員が傘をさしていました。列の一番先頭には、腰の曲がった高齢女性が立っていたのですが……。
先頭に割り込む中年男性が!
予定時刻を少し過ぎたころ、バスが近づいてきました。ちょうどそのとき、いきなりどこからともなく傘もささない中年男性が現れ、高齢女性の前に悪びれる様子もなくさっと立ったのです。
割り込みをされた高齢女性は腰が曲がっており常に下を向いている状態で、そのうえ傘も差していたため、ちゃんと前が見えているのか見えていないのかA子にはよくわかりませんでした。A子を含めルールを守って列に並んでいる人も複数いましたが、中年男性の割り込みを注意できる勇気のある人はおらず……。
高齢女性が反撃開始!? 不穏な空気に……
バスが止まりドアが開く直前、高齢女性が自分の傘についていた水滴を振り落しました。するとその水滴が前にいた中年男性に思いっきりかかったのです。中年男性は「冷たっ!」と声を荒げ、後ろの高齢女性を睨みつけました。一瞬で不穏な空気が流れ、A子は高齢女性のことが心配になりました。
耳が痛い言葉を中年男性に投げかけた!
しかし、A子の心配をよそに高齢女性は腰を曲げたまま「あら、ごめんなさいね~。前に誰もいないと思ってたから~。」とさらっと言ってのけたのです。中年男性は高齢女性を睨みつけただけで、特に言葉を発することはなく、バスに一番に乗り込んでいきました。
一部始終を見ていたA子は、思わず胸がスカッとしてしまいました。もしかしたら高齢女性は中年男性の割り込みを見て、わざと水滴をかけたのかもしれません。中年男性の割り込みは許せませんでしたが、幾分気分がすっきりとしたA子でした。
中年男性の存在に気付かず、本当にたまたま傘の水滴がかかってしまったのか、あるいは割り込みされたことの反撃としてわざと水滴をかけたのか……。後者の場合、あまりよくないことではありますが、体は衰えていても高齢女性の気持ちの強さを感じますね。
もちろん一番悪いのは割り込みをしてきた中年男性です。傘を持っていなかったのか、並んでいることに気づいていなかったのかわかりませんが、マナーはきちんと守らないといけませんね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:ichika.K