そして夫は、そのままキッチンの方へ行きました。(何か用意してくれるのかな?)とAさんが見ていると、あろうことか缶チューハイを取り出して、開けて飲み始めたのです!
「え、病院まで連れてってほしいんだけど……」とAさんが言うと「えー! そう言ってくれないと分からないじゃん! もう飲んじゃったよ〜」と、悪びれる様子もないのでした。「もしものことがあったら、家族をすぐに病院に連れて行けるようにしないと」といった、先のことまで想像して欲しかったのですが……。
結局、Aさんはタクシーを呼び、子どもたちを乗せて病院まで連れて行きました。
数日後、仕事中に夫が発熱し、仕事を切り上げて帰ると連絡がありました。その日はパートだったAさんは、下校時間と降園時間に子どもたちを迎えに行き、3人で近くのファミレスでご飯を食べてから帰宅。冷蔵庫に入っていた缶チューハイを飲んでいると、夫が寝室から出てきて、「俺、熱で辛くて寝てるのにご飯も作ってくれないの? なんで3人だけで外食してるんだよ? ていうか病院連れて行ってほしいのになんでお酒なんか飲むんだよ! もうちょっと察してくれてもいいじゃないか!」と怒鳴ったのです……。
「これ、この間私たちが熱出した時に、あなたがやったことよ? 察してほしい? あなたがそれを言うの?」と無表情で言い返したAさんなのでした。
Aさんは冷凍しておいた手料理を解凍して出した後「もし病院行くならタクシー呼ぶから言って」と夫に伝えました。夫は気持ちが落ち着いたようで、黙々とご飯を食べた後、薬を飲んで寝室へ行きました。
病人に対して少しやり過ぎた仕返しだったかなとも思いましたが、夫は今回のことでようやく「病気の時にしてほしいこと」を理解してくれた様子でした。
今回のことは、Aさんも言葉足らずだったかもしれません。一方で、普段のようにお互いに細かく話せればいいのですが、体調不良の時はなかなか思うようにコミュニケーションが取れないこともあることでしょう。
今目の前で考えなければならない「自分がすべきこと」だけでなく、相手のことを思ってもう一歩先に起こり得ることを考えられるようになれば、夫婦間の予期せぬすれ違いを防げるようになるのではないでしょうか。
話しても理解されないような「わからない」の壁があった時、強硬手段を取ってしまうこともあるでしょう。けれど最終的には、お互いに歩み寄ることが大切ですね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:南さおり