多忙なシングルマザー
私は息子が幼い頃に離婚して、シングルマザーとして息子を育てています。
私の両親は既に他界していて、おまけに私は一人っ子。
頼れる人もおらず、必死で働いている毎日です。
息子が小学生の頃、毎年のように授業参観があったのですが、なかなか仕事の都合がつかずに息子には寂しい思いをさせていました。
小学校最後の授業参観
息子が6年生になり、小学校最後の授業参観の日のこと。
息子から「お母さん、お仕事大丈夫だったら見に来て! 今日は体育の授業でリレーをやるんだよ!」と言われました。
息子は足が速く、私にカッコ良いところを見せたかったのでしょう。
息子の気持ちに応えようと、私は次の仕事までの待機時間を利用して、授業参観に行くことにしました。
作業着で駆け付けると……
私の仕事はダンプの運転手です。
作業着のまま授業参観へ行くと、同じクラスのボスママの軍団が「何? あのかっこ!」「作業着で来るなんてねぇ」などと言って、さんざんバカにしてきました。
家に帰る時間はなく、授業参観のあとはまだ仕事が残っていたので、着替えるわけにもいきません。
でも、息子の勇姿が見られたので、私は気にせずに学校を後にしました。
カッコいい!
仕事に戻ろうと学校の隣の臨時駐車場に停めてあったダンプに乗ると、校庭にいた息子のクラスの子たちが「すごい! カッコいい!」と大騒ぎし始めました。
息子は「お母さん! 気を付けてね! ありがとう!」と、とても嬉しそうな顔で手を振ってくれました。
私のことをバカにした保護者たちが悔しそうな顔をしているのが見えましたが、息子がとても嬉しそうな顔をしていたので、バカにされたことはどうでも良くなりました。
帰宅後
仕事を終えて家に帰ると、息子は満面の笑みを浮かべていました!
「クラスの子がね、みんなお母さんのことカッコいいって言ってたよ!」
「先生も、仕事中に見に来てくれるなんて、いいお母さんだねって言ってた!」
きっと息子は今まで寂しい思いをしてきた分、喜んでくれたのでしょう。
でも、着替えようと鏡に映った自分の姿は、あちこち泥だらけ……。
無邪気に喜んでくれた息子には少し申し訳ない気持ちでしたが、息子の笑顔を見たら、行って良かったなと思いました。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:RIE.K