他人のお金や私物を「これくらいいいじゃん」と平気で盗む人ってたまにいますよね。金額にかかわらず、盗むというその行為そのものが犯罪であることを理解していないのでしょうか。今回は親しい人に窃盗を働かれていた経験のある筆者の知人、Hさんから聞いたお話です。

「ふぅー、疲れた」
その誰かはひとりごとを言いながら、Hさんのデスクの前に立ち止まります。そして間もなく、貯金箱を持ち上げるジャラっという音がしました。
「なんだ、こんだけしか入ってないじゃん」
その人物は貯金箱を開けてHさんの机の上に小銭を広げ、小銭を吟味しているようでした。
「ジュース買お」
小銭を数枚抜いて残りを貯金箱に戻し、その人物は部屋の隅にある自動販売機に向かって歩き出しました。

Hさんはそっとデスクから顔を出し、その人物の後ろ姿を確認します。それはなんと、貯金箱について話していた隣りの席の後輩でした。

「どうしよう……」
Hさんは後輩に注意するかどうか悩みましたが、目につくところに貯金箱を置いていた自分も悪いと思い、貯金箱を撤去するだけで済ませました。

のちにその後輩は女子ロッカーで、鍵をかけ忘れた人のロッカーからお金とブランド物の財布を盗んだのがバレてクビになってしまいました。

Hさんは「小銭を盗んで味をしめて、人のロッカーまで漁るようになってしまったのかもしれない。自分が早めに注意すれば良かった」とかなり悔やんだそうです。

盗み癖がエスカレートする前に止めておけば、とも思いますが、そもそも小銭を盗んだことも窃盗にあたります。何か理由があったのかもしれませんが、やっていいことと悪いことの区別ができなくなっていたのかもしれませんね。

※窃盗・詐欺は犯罪行為です

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子