息子の結婚
当時Kさんは女手ひとつで育てた息子さんが結婚し、お嫁さんも承諾してくれたため、Kさんと息子さん、お嫁さんの3人の同居生活がスタートしたばかりでした。
フルタイムで仕事をしているKさんの代わりに、家事は全て専業主婦になるお嫁さんがやってくれるとのことで、Kさんは心から同居を嬉しく思ったそうです。
ですが、お嫁さんは今まで実家暮らしであったため、家事の経験がなく、Kさんが色々と家事を教えることに。
正直言ってお嫁さんは大雑把であまり几帳面な方ではなく、何事もきちんとこなすのが好きなKさんには口を出したくなるようなことが多々ありました。
その度に「せっかく同居してくれているから」とお嫁さんには伝えず、掃除などはKさんがそっと後からやり直すこともあったのです。
そして同居してから1年後、徐々にお嫁さんの本性が現れだしたのです。
「あら、全部繋がってる」
ある日の夕食で、お嫁さんが切った大根の漬物が完全に切れておらず、Kさんが一枚箸でつまむと、蛇腹のように全部くっついてきました。
「すみません、切ってきます!」
お嫁さんは慌てて漬物の器を持ってキッチンへ。
「あれ、どうした?」
息子さんの声でKさんがお嫁さんの方を見ると、お嫁さんがしくしくと泣いているのです。
「え、私なにか悪いこと言った?」
「いえ……ただ、全部繋がってるなんて言われたら、遠回しに私の包丁遣いが下手って言われてるのかと」
「いやいや、そうは言ってないじゃない。ただ繋がってるなって思っただけよ」
「本当は私の料理が下手だって言いたかったんじゃないですか? それなら直接言ってくれたらいいのに」
Kさんと息子さんは困ってしまい、思わず顔を見合わせてしまいました。
「本当にそんなつもりはないのよ」
なんとかお嫁さんをなだめて、その場は収まりました。
嫁いびりに過剰反応
その一件をきっかけに、お嫁さんはKさんが何か言うたびに「お義母さん、それは嫁いびりですか?」としくしく泣きだすようになってしまいました。
お嫁さんが洗ったお皿の汚れが落ちきっていなかったので、後で洗いなおしたら「言ってくれれば洗いなおしたのに」と泣き、次に同じことがあったときに洗いなおしをお願いしたら、「それぐらいやってくれてもいいじゃないですか」と泣かれてしまいます。洗濯物で色移りを防ぐために分けるようお願いしたときも、同じように嫁いびり扱いされてしまいました。
Kさんはほとほと疲れ果ててしまい、お嫁さんが出かけている時に息子さんと話し合うことにしました。
「ねえ、やっぱり同居なんてしない方が良かったのかしら」
「その話なんだけど、実は」
息子さんが言うには、お嫁さんの育った実家も同居で、母親が祖母にいびられているのを見て育ったことから、嫁いびりに敏感になっているというのです。
「事情はわかったけど、このままでは私もやりづらいわ」
「俺からも言っておくから、母さんもあんまり刺激しないようにしてくれよ」
「そうねえ、気を付けるわ」