メイク上手なママ友
当時Mさんが親しくしていたママ友のなかに、いつもメイクバッチリの美人ママ、Kさんという女性がいました。
「Kさんってほんとにキレイね! どうしたらそんなにキレイになるの? おすすめの化粧品教えて欲しいわ」
Mさんは毎朝子どもと旦那さんの支度を手伝ったり、ご飯を食べさせたりでバタバタしてしまうため、子どもを幼稚園に送る時はいつもスッピン。
遠くに出かける用事がなければそのままメイクをしないので、今ではお化粧の仕方も忘れてしまいそうなくらいです。
それもあって、毎朝きちんとメイクをしているKさんのことを尊敬していました。
「ふふふ、いいよ。教えてあげようか?」
「え、いいの?」
Kさんにそう言われ、Mさんは子どもを幼稚園に送った後に、Kさんと化粧品を買いに行くことになりました。
ドラッグストアで……
「化粧品はいつもどこで買ってるの?」
幼稚園から歩く道すがら、MさんはKさんに尋ねました。
「買ったりなんかしないわよ。そんなお金ないし」
「どういうこと? いつも色んな色のリップやアイシャドウつけてるよね?」
KさんはMさんを連れて、近くのドラッグストアの化粧品コーナーに行きました。
「ジャーン! ここが私のメイク室よ!」
笑いながら、Kさんは化粧品コーナーのテスターを指さしました。
「え……これって、色とか質感とかをお試しするために置いてあるんだよね?」
「そうよ。でもせっかくタダで使えるんだから、使うしかないでしょ! 私、毎朝ここでメイクしてるの。まあポイントメイクだけだけどね」
「ま、毎朝!?」
なんとKさんの華麗なメイクは、ほぼテスターで仕上げられたものだというのです。
「それってお店に迷惑なんじゃ」
「えー、でもたまに買ったりしてるし、いいんじゃない? あ、この新色塗ってみたかったんだよねー」
Kさんはまったく悪びれる様子なく、新しいリップのテスターを指にぐりぐりと塗り付け、自分の唇に塗り始めました。