義妹の結婚式
「私、結婚するから!」
ある日Yさんは旦那さんの妹、つまり義妹に義実家に呼び出され、鼻息荒くこんな報告を受けました。
義両親が年をとってからの子であることもあって、義妹は旦那さんとも少し年が離れており、家族全員から甘やかされ放題に育ってきました。
わがままで我慢ができない性格からか就職をしても長くは続かず、30歳を過ぎてもバイトを転々としながら両親の年金に頼って生活しています。
そんな義妹が結婚するとのことで、旦那さんを含めた義実家がお祭り騒ぎ状態。
「おめでとう! どんな人?」
「バイト先の店長なんだけど、すごく素敵な人よぉ~、お兄ちゃんなんかよりずっとイケメン!」
「そ、そうなんだ」
義妹はうっとりとした顔でスマホの写真を見せてきます。
「あ、かっこいいね……」
見た目で比べられたことにモヤモヤしましたが、義妹が幸せならいいかとYさんと旦那さんはとりあえず褒めておきました。
「でもね、彼ったら全然お金ないの」
「ええ!?」
聞いたところによると義妹の結婚相手はあまりお給料が良くないらしく、貯金もほぼゼロであるとのこと。
「そうなんだ、結婚式は挙げるの?」
そう聞いたYさんの耳に飛び込んできたのは、義妹のまさかの発言でした。
ハワイで挙式!?
「何言ってるのYさん、もちろん挙げるわよ! ハワイでね!」
「ハ、ハワイ!?」
一体どこからそのお金を捻出するつもりなのか、義妹は結婚情報誌を開いてハワイでの挙式が特集されたページをYさんと旦那さんに見せました。
「ずーっと憧れてたの! 挙式は絶対にハワイでするから!」
「ハワイはわかったけどさ、費用はどうするんだよ? 父さんも母さんも年金暮らしなんだぞ」
旦那さんが聞くと、義妹はかわいこぶって小首をかしげながら言いました。
「お兄ちゃん、お祝いたぁーくさん弾んでね! あとは伯父さんとかイトコとか全員呼ぶからなんとかなるでしょ。あ、ホテル代と飛行機代は自腹でよろしく」
「はあ!?」
「かわいい妹の結婚式なんだよ? それくらいしてくれて当然じゃない?」
どうやら義妹は結婚式に呼ぶ親戚から高額なお祝い金をせしめ、それで挙式をするつもりのようでした。