騒ぎ続ける女性に……
「ごめんね、私たち遅くて……」
老夫婦はすまなそうに言いましたが、Oさんは「ごゆっくりお食事なさってください」と言ってとりなしました。
「ごゆっくりにも程があるでしょ! みんな待ってるんだから早くして欲しいわ!」
女性はなおも騒ぎ続け、老夫婦は気まずそうな顔でまだ食事が残っているにもかかわらず席を立とうとします。
あまりに女性が騒ぐので、店内で食事を楽しんでいる他のお客様も何事かと入り口をちらちら見ています。
さすがに見ていられないと、店主がキッチンから顔を出した瞬間、男性の太い声が響きました。
「さっきからうるせえなあ。自分のペースでゆっくり食べさせてやれよ。あんただってメシ食ってる最中にギャーギャー言われたら嫌だろ」
それは女性たちの後ろに並んでいた、若いカップルの男性でした。
「なっ、何よあんた!」
「何ってただの客だよ。みんなうまいメシ食うためにおとなしく待ってんの。腹減ってんのか知らねえけど、黙って待てないなら他の店行けよ」
若い男性に注意され、女性の顔はみるみるうちに赤くなりました。
「恥ずかしいわ、もう出ましょ」
「ちょっとあなた、口を慎むべきよ」
「騒いでごめんなさいね」
今まで黙っていた連れの女性たちは、あわてて女性を店から連れ出しました。
その後ランチタイムに平和が戻り、老夫婦はゆっくりと食事を楽しんで帰ることができました。なお女性客を注意してくれた若いカップルには、店主から小さなデザートがサービスされたそうです。
飲食店は誰もが平等に食事を楽しむ場所です。早く食べたい気持ちはわかりますが、自分を通して欲しいからと言って大騒ぎするのはマナー違反ですね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子