勤めている会社に謎の習慣やルールがあって、「この会社何か変だな」と思った経験のある人もいるのではないでしょうか。新人の頃は、変だと思っても口に出すことすらはばかられますよね。今回は、そんな会社の謎ルールに振り回された経験のある私の知人Kさんに聞いたお話です。
上司が変わって……
それから数年後、Kさんもすっかり職場に馴染み、今では飲み会で率先して部長に捧げる歌を歌うようになっていました。
ところが、やがて例の歌を捧げられるのが好きな部長が定年退職をしたのをきっかけに、新しい部長が着任。
「若輩者ですが、よろしくお願いします」
新しい部長はなんと、他の会社からヘッドハンティングされてきたまだ35歳の男性。Kさんの部署のベテラン女性社員たちよりずっと若かったのです。
「歓迎会の場所押さえました! 」
前の部長がいた時よりもウキウキした様子で、ベテラン女性社員が例の会場を予約していました。
そして歓迎会当日。いつものようにカラオケ付きの広間で、食事がテーブルに並ぶと同時にベテラン女性社員のひとりがマイクを手に取りました。
「では私から歌わせていただきます、部長に捧げる愛の……」と言ったところで、部長が口を挟みました。
「え、いきなり歌うんですか? ゆっくり食事しましょうよ。それと、部長に捧げるってなんですか? 僕は何も頼んでいませんよ、やめましょう」
部長に歌うのを止められ、会場にはいかにもムード歌謡らしい悲し気なBGMだけが流れました。
その後、部長の一声で飲み会でのカラオケは一切しないことになったそうです。職場に慣れてしまっていたKさんも、部長の制止でようやく目が覚めたとのこと。
女性社員が部長に恋の歌を捧げなければならないなんて、今の時代だとセクハラやパワハラで訴えられそうですね……。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子