筆者の体験談です。あるアジア圏の国に出かけた時の話。ナイトマーケットで値引き交渉をしながらショッピングを楽しんでいたところ、突然、「値引きしろってうるさいよ!」と店主に怒鳴られたのです。店主が怒った理由とはいったい……?

「値引き値引きってうるさい!」

どうしても欲しかったので、もう一声欲しい……
マーケットでの楽しい買い物に慣れてきた私は、しつこく値下げを要求しました。
最後の一声で根負けした店主が、がーんと値下げしてくれることを期待して。

ところが、店主の顔色が突然変わり、「あんた、値引きしろってうるさいよ! いい加減にして!」
と怒られてしまったのです。
店主は私の持ち物を指さし、英語でまくしたてます。

私が手にしていたものが……

「あんたは、その飲み物を簡単に買えるんでしょ?」
はっとしました。
「その飲み物を買えるほどのお金を持っているなら、なぜうちの店でも払ってくれないの!
なんでうちではそんなに値下げするの! 私にも生活があるんだよ!」

もう、申し訳なくて言葉も出ませんでした。その国の人たちを下に見るわけではありませんが、その国の物価は当時、日本の約3分の1でした。
外資系ハンバーガー店の価格が日本とほとんど変わらないということは、普通の生活をしている人たちにとっては、高価な店だったのです。

指摘されるまで、そのことに思いが至らなかった自分を恥ずかしく思いました。
何も考えず、ただただ値引き交渉が楽しくなってしまっていたのです。海外に旅に出る時は、その国の人々の暮らしへのリスペクトが必要だと反省したできごとです。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:田中つぐみ