親しい人のお誕生日付近に会うことになれば、誕生日プレゼントを用意しておこうと思う人が多いのではないでしょうか。今回は私の知人Aさんから聞いた、好意で用意した誕生日プレゼントが意外な展開を迎えてしまったお話です。

プレゼントを渡そうとすると

「いらっしゃい! 久しぶりね」
親友の家はそれはそれは立派な一戸建てでした。
「すごい、豪邸ね!」
「自慢じゃないけど、節約しまくったからね!」
親友は胸を張って答えました。よく見てみると、確かに豪華な家と不釣り合いなほど、親友の服は着古していて毛玉がついていました。そのことからも、かなり生活を切り詰めて、マイホーム貯金に回したのだと想像できました。
「あ、これお祝い! 新築と、娘ちゃんのお誕生日。幼稚園から帰ったら渡してもいい?」
プレゼントの包みを2つ見せると、親友の顔が一気に曇りました。

「あのね、うちはお金がかかるから誕生日のお祝いしてないの! 来年からねだられても困るから、勝手にプレゼントなんか用意しないでくれる?」
親友はAさんにそうまくしたてます。Aさんはその剣幕に押され、せっかく用意した誕生日プレゼントをバッグに仕舞おうとしました。
「まあ、お土産ってことでいいか。やっぱりちょうだい」
「う、うん……」
結局プレゼントはただの「お土産」として娘に渡されることになりました。

Aさんは複雑な気持ちで親友の娘にプレゼントを渡しました。

誕生日のお祝いをする、しないはそれぞれの家庭の教育方針です。

しかし、その理由が「お金がかかるから」という理由であることを親友の娘が知って、寂しい思いをすることがないといいな、とAさんは思ったそうです。良かれと思ってしたことでしたが、こんなことになるのなら事前に確認しておけばよかったなとも思いました。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子