人は、「行ってはいけない」などと禁止されると、どうしても興味が湧いて、気になってしまうものですよね。子供ならば、なおさらのこと。
これは、私の幼少期、果樹園を営む祖父母の家での実体験のお話です。
これは、私の幼少期、果樹園を営む祖父母の家での実体験のお話です。
田舎の祖父母の家
私は小学校入学前、果樹園を営んでいた祖父母の家に入り浸っていました。
広い畑や、農機具が並ぶ納屋、食べ放題の季節の果物。
古い家屋には、土間があり、私にとっては何もかもがたまらなく魅力的な環境でした。そんな環境で自由に行動していて、何をしようがどこへ行こうが怒られることはありませんでした。
たったひとつの禁止事項
しかし、祖父母からたったひとつだけ禁止されていた場所があったのです。
「ユウ(仮名)いいかい。この下の部屋には行っちゃダメだよ。怖いのが出てくるから」
優しい祖母が、家と納屋の間にぽっかりと開いた外の石階段の入り口を指差し、この時だけ真顔で厳しい口調になります。
石階段は細くて暗く、のぞいても下の様子が見えません。
私はその忠告のたびに背中がゾクゾクして、足早にその場を離れました。
長靴が
しばらく、祖母の言いつけを守っていました。
しかし、何をして遊んでいる時も地下室が気になり、付近を通っては階下をのぞき、のぞいては逃げ、そんなことを繰り返していました。
そんな時です。雨でもないのに履いていた長靴が、石階段の入り口の段差に引っかかり、5〜6段下くらいの石階段に転げ落ちてしまったのは。
私は、長靴を取ってくるという「仕方のない理由」により、そうっと階段を降り始めました。
「落ちた長靴を拾うだけ。下まで行かなければ大丈夫。」