「あ、おじちゃんとおばちゃんー」
義妹の家に着くと、すぐに旦那さんの姪がニコニコと顔を出しました。
「ねえ、うちにニモいるの。見てー」
4歳になったばかりの姪は、「ファインディング・ニモ」という映画が大好きで、義実家に来るたびにSさんの水槽に夢中になっていました。
「え、ニモいるの?」
「うん、こっちだよ」
姪っ子はSさんの手を引き、家の中へと案内しました。すると義妹の家のリビングには以前はなかった大きな水槽と、その中を泳ぎ回る熱帯魚が。
「こ、これは 」
Sさんの目はその中の1匹に釘付けになってしまいました。それは近所の熱帯魚屋さんでは買えない、珍しい種類の熱帯魚でした。
また、その他の熱帯魚たちの種類と数も、Sさんが育てていた魚たちと全く同じだったのです。
「ちょっとお兄ちゃんとSさん、急になんなの!?」
水槽をのぞき込んでいるSさんを見て、義妹が慌てて声を上げました。
熱帯魚泥棒の正体は
「おい、これみんなうちにいた魚だよな」
「…… 」
旦那さんにそう言われ、義妹はうつむいて黙り込みました。
「だって、子どもが欲しがったから」
「だからってなにも盗んでいかなくても。環境が変わったら体調を崩す子もいるんですよ?」
「そんなの知らないし! 別にいいじゃん魚くらい!」
「いいわけないだろ! 返してもらうぞ」
「ニモどっかいっちゃうの? ヤダー!!!!」
大人の話を聞いていた姪が、大声で泣き出してしまいました。
よく話を聞いてみると、義妹の頼みで熱帯魚を持ち出したのはお姑さんだということがわかりました。
「嫁のものはうちのものだって、お母さんが」
「そんなわけないでしょ!? 私が大事に育てた子たちです! 絶対に返してください」
1日に何度も熱帯魚を移動させるのは良くないと思い、Sさんは数日後に再び魚を返してもらう約束をしてその日は帰宅しました。
その後、魚たちは無事にSさんの元へ戻り、旦那さんにきつく叱られたお姑さんは改めて姪に熱帯魚を買ってあげたそうです。
孫が可愛いのはわかりますが、人が大事にしているものを、自分のもののように持ち出す行為は絶対にやってはいけないことですよね。嫁だからいい、という屁理屈は通りません。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子