自分が趣味で集めているものを盗まれたり壊されたりしたら、たとえ身内であっても許せないという人は多いのではないでしょうか。今回は大事にしていたあるものを身内に盗まれた経験のある私の知人Sさんに聞いたお話です。

趣味のアクアリウム

Sさんの趣味は水槽で魚や水草を育てる、アクアリウム。結婚をしてすぐに義両親との同居が始まってから、Sさんにとって唯一の癒やしともいえる趣味でした。

Sさんの旦那さんの両親は悪い人ではないのですが、早く孫を産むように急かされることが悩みのタネでした。

しかし結婚をして近くに住んでいる旦那さんの妹に子どもができてからはそちらに入りびたり、年金のほとんどをつぎ込んで色々なものを買い与えたりしていました。

そんなある日、Sさんがパートから帰ってきて熱帯魚の世話をしようと水槽をのぞき込むと、大事に育てていた熱帯魚が1匹もいなくなっていたのです。
「まさか、泥棒……?」
家の中を見て回りましたが、他に盗られたものはありません。Sさんが慌てて家の中を動き回っていると、ちょうど義妹の家から帰ってきたお姑さんが声をかけました。

「どうしたの、Sさん」
「ね、熱帯魚が盗まれてるんです! 警察に通報しないと……」
スマホを手にとるSさんの手を、お姑さんが押さえました。

義妹の家へ

「やめなさい、小魚くらいでみっともない」
「でもお義母さん、誰かがこの家に入ったことは間違いないんですよ?」
「他に盗られたものはないんでしょ、ならいいじゃない」
「そんな……」
「いいから早く晩御飯にしてちょうだい」
「わかりました」
いやに落ち着き払ったお姑さんの様子に、何かあやしいとピンときたSさん。夕飯のシチューを大量に作りました。

「これ、姪っ子ちゃんの大好物だから義妹さんにおすそわけしてきますね」
夕食後、Sさんはお姑さんがお風呂に入ったタイミングを見計らい、シチューの入った鍋を持って旦那さんと義妹の家に向かいました。

「熱帯魚、残念だったな。あんなに大事に育ててたし、珍しいやつもいたんだろ?」
義妹の家に行く道中、旦那さんが言いました。実はSさんから話を聞いた旦那さんも警察に通報しようと言ったのですが、お姑さんに止められてしまったのです。
「うん、この辺の熱帯魚屋さんじゃ買えない子もいたの。誰が盗って行ったんだろう」