これは私の体験談です。父の葬儀のとき、友人が来てくれました。友人は一人暮らしで喪服がないと言っていました。でも来てくれるだけでうれしかったので、そんなことは一切気にしないよと伝えたのですが……。

面白過ぎる!

よく見ると友人でした。友人はいつ買ったのかわからないぐらい前に買ったと思われる、就活風の黒のタイトスカートのビジネススーツを着ていました。サイズが全く合っておらず、前のボタンが閉まらないのに無理やり閉じていてボタンが飛びそうです。そして腕がパンパンで裂けそうで、肩パットが浮いていました。

就活はウン十年前の出来事です。友人はすっかり変わってしまった40代後半の体形に20代前半時代に着ていたスーツでやってきたのです。あまりに合っていないサイズ感で、漆黒の高級喪服の中で、薄ーい黒スーツがかなり浮いていました。

わざわざ来てくれてとても嬉しかったのですが、仲の良い友人ということもあり、笑うのを我慢できず、思いっきり笑い泣きしてしまった私。

友人の優しさに涙

「普通の服でいいって言ったのに」と私が言うと、友人は小さな声で

「いけるかなと思ったけどダメだったわ。これしかなかったんだもん」と自分でも笑っていました。

友人のおかげで、父を亡くし激しく落ち込んでいた私の心は、とても明るく楽しい気持ちになりました。「笑ってごめんね」というと「少しでも元気になってくれてよかったわ。心配だったから」と言ってくれました。

今でも思い出すと笑ってしまうけど、ほんの少し心があったかくなる思い出となりました。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:鈴木まさ美