義実家メンバーからの突撃
翌日、早朝に玄関のベルがなり、Yさんと旦那さんは眠い目をこすりながらモニターを確認しました。そこに映っていたのは旦那さんの両親と妹。
「あれ、うちの親と妹だ」
旦那さんは小首をかしげて玄関のドアを開けました。
「こんな朝早くに何?」
「宝くじ当たったんでしょ、うちにも分け前よこしなさいよ!」
玄関に入るなり、お義母さんが大声で言いました。
「……はあ?」
そういえば昨日旦那さんが実家からの電話に出て、世間話の流れで「そういやYが宝くじを当てて、そのお金でご飯食べてきた」と話題になっていたことをYさんは思い出しました。
「母さんの言う通りだぞ、誰がお前を育ててやったと思ってるんだ」
と義父が言いました。
「いや、当てたのはYだし」
旦那さんがそう言うと、義妹がキーっと目を吊り上げて言いました。
「嫁のものはお兄ちゃんのものでしょ! ほら、早くちょうだい! 私たち今から駅前のパチンコ屋に並ばなきゃいけないから早くしてよ」
旦那さんの一喝
「まだパチンコなんかやってたのかよ! 悪いけどあんたたちに分ける金はないよ。迷惑だから早く帰ってくれ!」
「何言ってんの、この親不孝者!」
「お兄ちゃんのケチ!」
「いいから早く帰れって!」
義実家メンバーと旦那さんの攻防を黙って見ていたYさんですが、ついにたまりかねて言いました。
「あのー、昨日の電話では金額言ってませんでしたけど。当たったのは1万円ですし、昨日焼肉食べちゃったんでもうないでーす」
「はあ!? 1万円ぽっちかよ! それを早く言えよ!」
義両親と義妹は憎まれ口をたたきながら、早くパチンコ屋に行かなければと慌ただしく出て行きました。
「なんか、ほんとうちの家族がごめん……」
がっくり肩を落とす旦那さんを慰め、Yさんはこれから宝くじが当たっても、金額を問わず誰にも言わないことを誓ったとのこと。
ちなみに残りの当選金は、きっちり貯蓄に回したそうです。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子