カリスマ店員と呼ばれて
数か月後、すっかりカリスマ店員と呼ばれるようになったEさん。いつものように店頭に立っていると、店の中に以前Eさんを面接してひどい言葉を投げかけた男性が来ているのに気づきました。
「いらっしゃいませ! もしかして、向かいのお店の方ですよね?」
男性はEさんを面接したことなどすっかり忘れているのか、はじめましてと言ってぺこりと頭を下げました。
「こちらのお店、ますます人気になっていますよね! 恥ずかしながら、うちの店はお客様が少なくなってきていまして……勉強させていただきたくて来ちゃいました」
男性はそう言って、キョロキョロと店内を見渡しています。
「あなたの着こなし、素敵ですね!うちの店員にも見習わせたいくらいです。失礼ですが、以前はどこで働いていたんですか?」
そう尋ねる男性に、Eさんは笑って答えました。
「前の仕事は全く違うジャンルなんです。なにしろそちらのお店に面接を受けにいって、ダサいって言われて落とされてしまいまして。あなたに」
「えっ!?」
男性は慌ててEさんの名札を確認し、覚えがあったのか気まずそうな表情を浮かべました。
「ですが、そのおかげで今があると思っています。あの時はありがとうございました」
「は、はあ……」
男性は少し悔しそうな顔をして、お店から出て行きました。
Eさんはその後、どんどん店の売り上げを伸ばした功績が認められ、今では本社で採用担当のお仕事をしています。
Eさんは、自分のように一念発起をして自分磨きができる、原石のような人を見つけたいと言っていました。
人はどんな出来事でガラッと人生が変わるかわかりませんね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子