ケーキ屋さんに行ってみると……
「よし! 尾行してやる」
旦那さんが車で出かけたのを見送って、Tさんは子どもとママチャリにまたがりました。
その足で、ケーキ屋と自宅の間に位置する自分の実家に行き
「お母さん、ちょっとこの子お願い!」
「え? あんたどこ行くの」
「すぐ戻るから!」
とTさんは実母に子どもを預け、再びママチャリに乗って猛スピードでケーキ屋に向かいました。
「あ、ちゃんとケーキ屋行ってるみたいね……」
ケーキ屋の駐車場に旦那さんが乗って行った車があるのを確認し、Tさんは一安心。店から少し離れたところに自転車を停め、そっと物陰から店内の様子を伺いました。
ケーキ屋さんはガラス張りで、ショーケースやレジのあたりもよく見えます。それなのに、そこに旦那さんの姿はありません。
「あれ、どこだ?」
Tさんはぐるっと店の横に回り、併設されているティールームをのぞき込みました。
「あっ!!!」
ティールームの中にはお茶を楽しむ女性たちに紛れて、若い女性と一緒にお茶を飲んでいる旦那さんの姿が。
「何やってんだあいつ」
Tさんはそのままずかずかと、ティールームに突撃しました。
「マ、ママ! どうしてここに? いや、違うんだこれは」
旦那さんは慌てふためいた様子。一緒にいる女性も、ママという言葉にさっと顔色を変えました。
「あの、違うんです奥様」
慌ててぱたぱたと手を振る女性から、いつも旦那さんの上着から香ってくる香水の香りがしました。
「一体何が違うのよ。クリスマスは一緒にいられないから、せめてお茶だけでもってとこでしょ? 昼間っからニコニコ不倫デート楽しんでんじゃねえよ!!!」
Tさんはそう言って、旦那さんが食べている途中のケーキを旦那さんの顔にぐちゃっと押し付けました。
「メリークリスマス! とんだサンタさんの登場ね!」
旦那さんの頬と顎に生クリームがべったりついて、思わず笑ってしまったTさん。
「あ、早くケーキ持って帰って来てよ。待ってるからね」
そう言い残し、Tさんは再びママチャリにまたがって子どもを迎えに行きました。
数分後、旦那さんはクリームやスポンジをまだ少しぬぐい切れないままの姿で、慌てて帰ってきたといいます。
その後クリスマスパーティーは無事に終わり、子どもが寝た瞬間に旦那さんは土下座。すぐに不倫を認め、もう別れると誓ったそうです。
Tさんにとってはとんでもないクリスマスでしたが、結果的に不倫相手と別れさせることができて良かったですね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:緑子